開幕から6試合連続安打

開幕から目覚ましい活躍を見せている渡部
西武のエンジンがかかってきた。開幕から4連敗を喫したが、敵地・みずほPayPayで
ソフトバンクに2連勝。4月4日の初戦で6対0とエース・
今井達也の好投で完封勝利を飾ると、翌5日も6対3と投打がかみ合って快勝。開幕から期待以上のパフォーマンスを見せているのがドラフト2位・
渡部聖弥だ。
ベテランと見間違うかのような落ち着き払った雰囲気で、風格を漂わせる。昨年は球団史上ワーストの91敗を喫し、得点力不足が最重要課題となっているチームで五番にどっしり座り、広角に安打を量産している。
日本ハムと対戦した開幕3試合で11打数5安打を記録。4月3日の
楽天戦(楽天モバイル)では4回二死一塁から
岸孝之の直球を右中間へはじき返す先制の適時三塁打を放った。左翼の守備でも5回に一死一、二塁で
宗山塁の左前打に猛チャージし、好返球で二塁走者の本塁生還を阻止。逆転負けを喫したため試合後に笑顔がなかったが、その後も勝利をつかむために奮闘する。
5日のソフトバンク戦は昨年最多勝を獲得した
有原航平から2回に左越え二塁打を放つなど、プロ初の猛打賞をマーク。4回は四球、9回は死球で出塁しており、5打席すべてで出塁した。6日の同戦も7回二死二塁で
尾形崇斗のスライダーを叩きつけて全力疾走し、二塁内野安打に。01年の
佐藤友亮(現日本ハムファーム打撃コーチ)に並ぶ球団新人最多記録となる開幕から6試合連続安打を記録すると、9回にも左前打と早くも自身4度目のマルチ安打で打率.478をたたき出している。
この活躍は決してフロックではない。オープン戦は打率.233だったが、セ・リーグ球団の打撃コーチは「対戦した新人の中で一番印象に残っているのは渡部聖ですね。体の軸がぶれず、逆方向に安打を打つ技術をつかんでいる。打撃のスタイルが
牧秀悟(
DeNA)に似ていますよね。シーズンに入ったら打ちますよ。ドラフト1位で獲るべき選手だったと思います」と高く評価していた。
大学では1年からレギュラー定着
昨秋のドラフト1位で5球団による争奪戦となった宗山塁(楽天)は、広陵高でチームメートだった。アマチュア球界No.1遊撃手として宗山の実力は高く評価されていたが、渡部聖も負けていない。大商大で1年春からレギュラーに定着。1年から2年にかけて食事やトレーニングを見直したことで進化が加速する。2年春にリーグ戦で首位打者を獲得すると、1年間で体重が10キロ以上増たことで飛距離も伸びた。2年秋はリーグ新記録の5本塁打。昨年の全日本大学野球選手権では東京ドームの右翼席中段に本塁打を叩きこんだ。
ドラフトでは1位候補と目されていたが、なかなか名前が呼ばれない。宗山や大商大の先輩であるNTT西日本・
伊原陵人(
阪神)の1位指名を画面越しで見る表情は硬かったが、西武からドラフト2位で指名された。喜びの感情がわき上がってきた一方で、1位で指名されなかった悔しさもあっただろう。「すごくドキドキしていて、呼ばれた瞬間はホッとしました。選んでよかったと思われるように頑張りたいと思います」と誓っていた。
右方向への打球が目立った牧
前出のコーチが「打撃スタイルが似ている」と評した牧も、ドラフト2位でDeNAに入団している。大学球界を代表する強打者として名を轟かせていたが、プロ入り後の活躍は周知のとおりだ。新人の21年に打率.314、22本塁打、71打点の好成績で主軸として不可欠な存在になり、23年に打率.293、29本塁打、103打点で打点王、最多安打(161本)のタイトルを獲得。侍ジャパンでWBC世界一にも貢献した。逆方向に長打を飛ばす能力が高く、21年8月25日の阪神戦(京セラドーム)でサイクル安打を達成したときは、すべての安打が中堅から右方向だった。
渡部聖の目指す選手像は「足と守備と打撃、全部の面で欠点のない5ツールプレーヤーを目指しています」。シーズンは始まったばかりだが、今後の活躍から目が離せない。
写真=BBM