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元中日のブランコさんが事故で急死…インタビューで明かしていた「本塁打への特別な思い」

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ウッズに代わる長距離砲として


強打を発揮して中日を何度も勝利に導き、ファンを喜ばせた


 ショッキングなニュースが飛び込んできた。中日、DeNAオリックスでプレーしたトニ・ブランコさんが、ドミニカ共和国の首都・サントドミンゴで4月8日未明にナイトクラブの屋根が崩落した事故に巻き込まれて死去した。44歳の若さだった。現地メディアによると、死者数は少なくとも124人にのぼるという。

 DeNAでかつてチームメートだった選手は「びっくりしました。早すぎますよ。ニュースで他の人を突き飛ばしてかばったと聞きました。ブランコは優しい性格なのであいつらしいなって……」と声を詰まらせた。

 中日に入団したのが2009年。タイロン・ウッズに代わる長距離砲として獲得した。ウッズの推定年俸は約6億円に対し、2700万円と格安の契約だった。メジャー通算1本塁打と目立った実績がなかったが、当時中日の一軍バッテリーチーフコーチだった森繁和氏がウインターリーグを視察し、ブランコさんの打撃に目を見張ったという。

「ウッズの代わりが務まるヤツなど簡単にはいないだろうと思って見たら、圧倒的な飛距離が際立っていた。中日が提携していたチームの四番だったので、調べたら性格もいい」

日本で進化した打撃


 実力が未知数だった助っ人は、その名をすぐに轟かせた。09年4月3日の開幕・横浜戦で、三浦大輔(現DeNA監督)のスライダーをナゴヤドームのバックスクリーン中段に運ぶ来日初打席初本塁打。同月19日の巨人戦で高橋尚成からナゴヤドームの3階席に運ぶ特大アーチを放った。その飛距離は異次元だった。5月7日の広島戦では前田健太(現タイガース)からナゴヤドームの高さ50メートルの位置にある天井スピーカーに直撃する推定飛距離160メートルの大飛球を放ち、同球場で初の「認定本塁打」を記録した。来日1年目から全試合で四番に座り、39本塁打、110打点で二冠王を獲得。一塁の守備も一生懸命に取り組み、フィールディング能力に定評があった。

 中日で4年間プレーし、DeNAに移籍した13年は打率.333、41本塁打、136打点といずれも自己最高の数字で自身初の首位打者と2度目の打点王を獲得。ウラディミール・バレンティンがNPB新記録の60本塁打を樹立したため三冠王獲得はならなかったが、パワーだけでなくコンタクト能力も日本でプレーを重ねて上がっていた。

本塁打には「技術が必要」


DeNA[写真]、オリックスでもプレーし、通算181本塁打を放った


 ブランコさんは13年5月に週刊ベースボールでのインタビューで、握力を測定している。右手が65キロ、左手が58.5キロと怪力ぶりを裏付ける数値を出したが、「本塁打を打つにはパワーとテクニック、どちらが重要だとお考えですか」という質問に対し、「どちらも必要だけど、しいて言うならばテクニックのほうがより重要となるだろう。本塁打を打つには、このボールに対応するにはどうしたらいいのかとか、バットの芯に当てるためにはどうしたらいいのか、というような技術が必要だから」と語っている。

 本塁打には特別な思いがある。

「自分たちはエンターテイナーであり、ファンの皆さんを喜ばせること、夢を与えることが仕事。自分としては、本塁打がたくさん出た方が楽しい野球を見せられると思っている。野球の醍醐味というのは、やっぱり三振か本塁打。それがあるからこそ、盛り上がるのではないかと思うよ。(理想のホームランバッター)はアルバート・プホルス(当時エンゼルス)だね。昔からいいバッターだと思っていた。ただ、日本に来てからは、理想を追うより、まず自分がちゃんとやらないとプホルスのような一流の打者にはなれないと思った。それに、例えば巨人の阿部慎之助さん(現巨人監督)だったり、日本にも本当にいいバッターがそろっているから、まずは彼らに負けないように頑張らないといけないなと思うよ」

 14年以降は度重なる故障の影響で本来のパフォーマンスを発揮できず、16年に2年間プレーしたオリックスを退団したが、日本のことが大好きだった。突然の訃報にSNS上では悲しみのメッセージにあふれたが、異国の地で強烈なインパクトを残した活躍は色褪せない。天国で選手たちのプレーを穏やかに見守っているだろう。

写真=BBM

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