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他球団から「今永昇太と球質が重なる」 投手タイトル狙える「巨人の左腕」は

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ベストの布陣ではない現在


4月22日の中日戦で8回14奪三振1失点の好投を見せた井上[写真=BBM]


 巨人が「伝統の一戦」でなかなか勝てない。4月26日の阪神戦(甲子園)で2度のリードを守れず、2対6で逆転負け。阪神戦に開幕5戦5敗は1リーグ制時代の1948年以来77年ぶりとなった。

 現状の戦力を見るとベストの布陣とは言えない。丸佳浩は開幕前に「右大腿二頭筋筋損傷」で戦線離脱。シーズンに入ると、坂本勇人、エリエ・ヘルナンデスと主力選手たちが打撃不振でファームに降格した。この窮地で若手が台頭してほしいところだが、秋広優人はイースタン・リーグで打率.161、2本塁打、4打点と一軍昇格に向けてアピールできていない。浅野翔吾も打率.091、0本塁打、6打点と精彩を欠き、一軍を経験した支配下の選手では異例の三軍降格となった。

 投手陣では2年連続2度目の開幕投手を務めたエース・戸郷翔征が3試合登板で0勝2敗、防御率11.12と打ち込まれる登板が続き、復調に向けてファームで再調整している。阪神戦は苦戦しているが、このチーム状況で貯金1あることをプラスに捉えた方が良いかもしれない。

スケールアップした左腕


 先発陣は戸郷が戻ってくるまで、踏ん張りどころだ。その中で活躍が光るのが、山崎伊織井上温大だ。山崎は4試合登板して3勝0敗、防御率0.00。2007年に年高橋尚成がマークした開幕から28イニング連続無失点の球団タイ記録に並んだ。井上も4試合登板して2勝1敗、防御率1.61と安定した投球を続けている。

 今年の井上はスケールアップしている。4月22日の中日戦(東京ドーム)では、奪三振ショーを繰り広げた。初回二死一、三塁のピンチでジェイソン・ボスラーのバットをへし折る遊ゴロに切り抜けて波に乗った。2回以降は3イニング連続で三者凡退とリズムを作り、5回に中田翔にソロを被弾したが失点はこの一発のみ。140キロ台後半の直球に中日打線のバットが空を切る。スライダー、フォーク、ツーシーム、カーブの制球力も良く初回から8回まで全選手から自己最多の14三振を奪った。

カブスで中心投手となっている今永[写真=Getty Images]


 ファームで格の違いを見せていたものの、一軍で本来の姿をなかなか発揮できない時期が続いた。だが、昨年は25試合登板で8勝5敗、防御率2.76とリーグ優勝に貢献。11月に開催されたプレミア12でも侍ジャパンに選出された。他球団のスコアラーは「今永昇太(カブス)と球質が重なります。直球がベース盤で浮きながら加速するイメージでコンタクトするのが難しい。変化球の制球力も以前より改善されているので、有利なカウントを作って打者と勝負できている」と分析する。

投球で大事にしている感覚


 井上は今永と自主トレを行い、技術面での助言を受けている。球界を代表する同じ左腕の投球スタイルは参考になる点は多いだろう。今永は週刊ベースボールの取材で、投球で大事にしている感覚について以下のように語っていた。

「投球動作において大事なポイントはいくつもありますが、基本的にボールが指先から発射された後はすべて惰性です。僕は『投げることはリリースの瞬間にもう終わっていて、その後の動きは自然に流れていく』という認識をしています。言い換えれば、最終的には『いかにリリースへ力を上手く伝えるか』という部分が大事だということです」

「リリースポイントに関して、一般的にはよく『前で離せ』と言われたりもしますが、それを言葉通りに受け取って、腕が体よりも前に出た状態でボールを離すというのは理想的ではありません。そうすると体幹と腕がつながらず、腕の力だけでしか頑張れないからです。リリースポイントの基本は体側(体の真横)で、僕なりの表現としては『“気を付け”の状態から腕を横に大きく広げて上げたところで離すイメージ』。体幹からボールを持った左手までが1つの平面としてつながって投げられるのが理想です」

 巨人の先発左腕はなかなか一本立ちしない時期が続いていた。井上は投手陣の軸になれるか。自身初の2ケタ勝利は通過点で、投手タイトルを狙う力は十分に備わっている。

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