2017年が明ければ、NPBスカウトは各チームへ、新年のあいさつ回りに出る。その動きはスカウト戦線のスタートを意味する。中村和久氏(元巨人チーフスカウト)が、ドラフト候補選手をピックアップしていく。 早実を引っ張る主将・清宮、高校通算100本超えは確実
17年のドラフトで目玉の選手となりそうなのが、早実・
清宮幸太郎と履正社高・
安田尚憲の東西スラッガーだ。すでに12球団のスカウトは1位候補にリストアップしているだろう。高校生の大砲コンビが、どこまでレベルアップするか注目したい。

2016年11月の神宮大会決勝で直接対決した早実・清宮と履正社高・安田(下)の“東西スラッガー”が、ドラフト戦線においても17年の顔となりそうだ
清宮は1年夏の甲子園では2本塁打を放ち、チームの4強入りに貢献した。すでに高校通算70本塁打を超え、並外れた飛距離が持ち味。出場が確実視される17年センバツでは各校からマークされると思うが、主将には甘い球を一振りで仕留める技術がある。故障さえなければ、高校通算100本はクリアできる。
明治神宮大会決勝では清宮の一発に負けまいと、安田も豪快なアーチを右翼席にたたき込んだ。本塁打数は及ばないが、40本を超える。アーチストの角度を持っている選手だけに、プロでも将来のクリーンアップ候補。大型三塁手として、守りも高校生としては及第点。基礎練習を反復すれば、さらに上達するだろう。
高校生投手では常時140キロ台の直球を投げ込む東海大市原望洋高・
金久保優斗、最速145キロを誇る履正社高・
竹田祐が上位候補か。秋季東京都大会決勝で清宮から5三振を奪った日大三高・
櫻井周斗は、左腕から縦に鋭く変化するスライダーが武器。打者としても非凡なセンスを持っているだけに、投打で注目だ。
捕手では神宮大会で本塁打を放った福岡大大濠高・
古賀悠斗が筆頭。内角をうまくさばく技術があり、リード面を含めた守りも安定する。横浜高・
福永奨は中学時代に日本代表入りするなど、強肩強打が魅力。1年時から頭角を現した九州学院高・
村上宗隆、新チーム結成後に外野から捕手に転向した神戸国際大付高・
猪田和希も経験を積めば面白い。
外野手は素質のある選手がそろう。右打者では横浜高・
増田珠が中学時代に日本代表の四番を務め、慶応高・
正木智也は2年春から主軸としてチームをけん引。智弁学園高・
福元悠真は豪快なスイングが売りで、2年春の甲子園で左翼席に一発を放ち、優勝に貢献した。左打者では花咲徳栄高・
西川愛也、2年時のセンバツでバックスクリーンへ特大本塁打を放った龍谷大平安高・
岡田悠希、作新学院高・
鈴木萌斗は16年夏の甲子園決勝で2安打を放つなど、俊足が最大の武器。いずれの選手も今後の伸びしろが期待できるだけに、春の結果次第では人気が出てくる。
JR東日本の左腕・田嶋、高卒3年目で着実に成長
大学生投手は投げっぷりのいい明大・
水野匡貴、3年時に大学日本代表入りし、左腕からのスライダーがキレる明大・
齊藤大将をはじめ、本格派の早大・
柳澤一輝、中大・
鍬原拓也が続く。195センチの大型右腕、国士舘大・
椎野新は粗削りながら将来性は十分。亜大・
高橋遥人と
嘉陽宗一郎の左右コンビは、ともに140キロを超える直球でグイグイ押すタイプ。3年時に日本代表入りし、日米大学選手権で先発した東大・
宮台康平は、3年秋に左肩故障の影響でリーグ戦登板は1試合のみ。万全な姿を春以降に見せられれば、上位候補になってもおかしくない素材だ。

東大の150キロ左腕・宮台は16年秋、左肩痛により1試合の登板。万全のコンディションならば、ドラフト1位で消えてもおかしくないだろう
専大・
高橋礼はアンダースローから度胸満点のマウンドさばきを見せ、九産大・
草場亮太は最速152キロを計測する。1年時から経験豊富な横浜商大・
渡辺佑樹も、球速が出てくれば左腕だけにチャンスはある。
捕手では立正大・
小畑尋規、桜美林大・
大平達樹が、3年時までの経験をどう生かしてくるか。ともにドラフト指名された投手(立正大・黒木、桜美林大・佐々木)とコンビを組んできた実績もプラス材料だ。
内野手では全日本大学野球選手権で2本塁打を放った奈良学園大・
宮本丈が上位候補。俊足と安定した遊撃の守りも売りだ。小柄ながら三拍子そろった国学院大・
山崎剛、東北福祉大・
楠本泰史、東海大・
下石涼太、亜大・
北村拓己らも経験豊富な選手。
外野手では早大・
八木健太郎、豪快な打撃で抜群の飛距離を誇る慶大・
岩見雅紀らが目立つ。
社会人にも楽しみな選手がそろう。投手では本格派のヤマハ・
鈴木博志、JR東日本・
田嶋大樹が筆頭だ。左腕・田嶋は佐野日大高時代にはセンバツ4強入りへ導き、社会人で順調に成長。3年目に主戦として大事な試合で好投できるかがポイントになる。

JR東日本の左腕・田嶋は17年で社会人3年目。高卒のドラフト解禁年を迎え、ストレートでのプロ入りを目指している
JX-ENEOS・
柏原史陽、
齋藤俊介の右腕コンビは安定感が光り、先発として試合を作る能力が高い。三菱日立パワーシステムズ横浜・
大野亨輔、NTT東日本・
西村天裕、東京ガス・
石田光宏、日立製作所・
鈴木康平ら大学時代から実績のある投手も、ドラフト対象に入ってくる。
捕手は報徳学園高から入社3年目の大阪ガス・
岸田行倫、内野手は
広島・
田中広輔の弟、日立製作所・
田中俊太が攻守走のバランスが良い。JX-ENEOS・
谷田成吾、日立製作所・
菅野剛士は左のパワーヒッターとして、注目が集まる。
筆者プロフィール なかむら・かずひさ●1947年10月6日生まれ。三重県出身。高田高から名古屋商科大へ進み、70年にリッカーへ入社して都市対抗2度出場。74年限りで引退後はマネジャー、コーチ、部長代理を経て82年に監督就任。元
阪神・中西らを育て、84年にチームが活動停止。85年に巨人スカウトへ転じ、87年から9年間は近畿・中国地区を担当、06年から4年間は球団代表直属チーフスカウトに。岡島、元木、
橋本清、高橋尚、阿部、野間口、亀井、山口、金刃、長野らの入団に尽力した。09年12月限りで巨人を退団し、ベースボールアナリストとして取材活動中。