2024年春。大阪の高校野球は大きな動きがあった。大院大高が府大会で初優勝。4回戦で履正社高、準々決勝で大阪桐蔭高を撃破。「2強」と言われる強豪校から勝利を挙げた原動力は、攻守走3拍子がそろう不動の三番・遊撃の主将だ。 取材・文=小中翔太 写真=宮原和也 
打撃練習から集中力を研ぎ澄ます。試合のための練習が、実戦での勝負強さにつながる
「度胸」が生んだ右前打
デッドリフト210キロを持ち上げ、握力は右が74キロで左が68キロ。遠投115メートルの強肩で50メートル走5秒9の俊足。身体能力の高さは誰の目にも明らかだ。ただ数字で測れる部分だけでは、今坂幸暉を語れない。空気を変えられることが最大の特長。
今春の大阪桐蔭高との大阪大会準々決勝の最終回は、独壇場だった。1点ビハインドの9回表無死一塁から右前打を放つと、この一打に相手の失策が重なって同点に追いつく。三塁まで進塁した今坂は相手のバッテリーミスで生還し、勝ち越しのホームを踏んだ。その裏に背負った二死二塁のピンチでは、前方への小フライを大事にキャッチ。ウイニングボールをつかみ取った。“横綱”を相手に価値ある逆転勝利を収めると、チームは勢いそのままに春の大阪を初制覇。4回戦では履正社高から勝利を挙げており、“2強”を撃破して初の頂点に立った。
「やってほしい想定以上のことをやりますので、すごいです」と辻盛英一監督。大阪桐蔭高との準々決勝での逆転につながる一打についても「その球、打つ? すごい度胸やな」と話した。今坂が打ったのは、2ボールから決して簡単ではない低めの変化球。仮に凡退していれば、敗因の一つに挙げられてもおかしくない。ほとんどの打者が見逃すであろう球に手を出した理由を、今坂はこともなげにさらりと言ってのけた。
「チームの方針としてファーストストライクを打ちにいくとやっているんで、自分の中で待つという選択肢もなかったです。でも・・・
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