球団史上初の決断を下した。甲斐拓也が巨人にFA移籍したことに伴う補償については、年が明けてより一層、注目度が増していた。迎えた1月16日にソフトバンクが発表したのは、プロ入り5年目右腕の獲得。今オフは新戦力として“またしても”投手が加わる。 
右肘手術や育成契約などを経て、昨季プロ初登板を果たした伊藤。新天地でさらなる飛躍なるか
金銭でもなく、捕手でもなかった。今オフ、国内FA権を行使した甲斐拓也(当時ソフトバンク)の巨人への移籍が発表されたのが、2024年12月17日。FA選手を獲得する際、旧所属球団での日本人選手の年俸ランクが上位10人のBランク以上だと補償が発生し、相手球団は金銭補償か人的補償プラス金銭補償を選択することができる。ソフトバンクは過去、ダイエー時代を含めて10選手の国内FA流出があり、そのうち5選手が補償対象だったが、人的補償を選択したことは1度もなかった(※07年まで年俸ランク付けのない旧制度)。
ただ、今回に関しては人的補償を選択するのではないかという見方が強かった。しかも、正捕手だった甲斐が抜けるとあって、巨人が提出した28人のプロテクトリスト次第では捕手を“補填(ほてん)”する可能性が高いとも。さまざまな憶測が飛び交う中、ソフトバンクから正式発表がなされたのは1月16日。プロ入り5年目右腕・
伊藤優輔の獲得だった。伊藤は21年ドラフト4位で巨人に入団。1年目の11月に右肘のトミー・ジョン手術を受けると、オフに自由契約となり育成再契約に。昨年7月に支配下復帰して一軍デビュー。150キロを超える直球を武器にリリーフで8試合に登板して0勝0敗1ホールド、防御率1.04をマーク。二軍では40試合に登板して14セーブ、防御率1.29という好成績を残した。
伊藤の入団発表後、三笠杉彦GMは「いいピッチャーが獲れてよかったなというふうに思っています」とした上で、「昨年も投手陣は大変よくやっていただきましたけど、相対的に見て底上げが必要だと考えている」と決断の意図を説明。昨季4年ぶりにパ・リーグを制したチームだが『投手力強化』は引き続きの課題とされ、今オフも積極的な補強に乗り出してきた。その中で、ここでもさらなる新戦力の上積みにこだわった形だ。
1月17日に今年初めて筑後のファーム施設を訪れて合同自主トレ中の新人選手らを視察した
小久保裕紀監督は、報道陣の取材に応じると今回の人的補償の件も含めたオフの補強についても語り、「先発とイニングまたぎができるロング。そこが補強ポイントだと思っていた。十分競争してもらえる環境が整ったと思います」。先に獲得していた
上沢直之、
濱口遥大、
上茶谷大河とともに、伊藤もまず先発で勝負させる旨を明らかにした。

筑後視察の際、小久保監督[写真右]は伊藤の起用についても言及[同左は奈良原浩ヘッドコーチ]
課題改善のために徹底した今オフ。リーグ連覇、5年ぶりの日本一に向けての“下準備”は整った。
■2025年新加入投手一覧 
※支配下のみ、ルーキーの丸数字はドラフト順位