通算300号本塁打まで残り3本で今季を迎えた楽天・浅村栄斗。開幕から順調に本数を重ねて20試合目で節目の記録に到達した。しかし、本人に大きな喜びはない。個人記録より価値ある一打を放って、優勝をつかみ取りにいく。 
エスコンFの右翼ブルペンへ通算300本塁打となる一発をたたき込んだ[写真=毛受亮介]
1点差を追う8回だった。4月22日の
日本ハム戦(エスコンF)。先頭で打席に入った楽天の三番・浅村栄斗はカウント1-2から
杉浦稔大が投じた4球目、外角高め151キロ直球を強打した。打球は右翼ブルペンに着弾する3号同点ソロ。続く
フランコが勝ち越し弾を放つなど、この回3点を挙げた楽天打線が反撃して4対2で勝利をつかむきっかけとなった浅村の一打は記念すべき史上47人目の300本塁打だった。
「若いときから使っていただいて、この成績、数字までたどり着くことができて、本当にいろんな方に感謝したいです。まさかプロで300本もホームランが打てるとは思ってなかったので、1本1本積み重ねてこられて良かったです。これがゴールでもないですし、1本でも多くファンの皆さんの前で打てるように日々頑張っていきたいと思います」
初本塁打は
西武時代の2010年8月10日の楽天戦(Kスタ宮城)、6回に
山村宏樹から左翼席へ放った一撃だった。300号には1968試合目で到達。史上2番目に遅いスロー記録だった。
20年には32本、23年には26本で本塁打王に輝いている。しかし、「自分はホームランバッターではない」と言う。初戴冠時にも次のように語っていた。「あくまで僕はヒットの延長がホームランになっているだけなので、今後もホームラン王を狙いたいとかはまったくないです。後ろにつなぐことやランナーをかえすことが自分の役割だと思っているので。ホームランよりも打率や打点のタイトルを毎年目標にしているので、そこでもっといい成績を残したいなと思いますね」
自分の役割は打点を挙げ、勝利に導くこと。西武時代の13、18年に打点王を獲得しているが18年は優勝を果たしている。19年にFAで楽天に移籍してきたが、まだ東北の地では頂点に立つ喜びを味わっていない。優勝のためにポイントゲッターの役割を果たすことだけを考えている。
4月26日現在、打率.309、4本塁打、13打点をマーク。チームも2位タイと上位に食らいついている。昨年は打率.253、14本塁打、60打点と不振に終わったが、今年は一塁にコンバートされ、スイングに鋭さが戻ってきた。もう一つの大記録である平成生まれでは初の2000安打にも残り11本と達成間近だ。しかし、「1本ずつ積み重ねるだけ」と意に介さない。背番号3は個人記録を意識することなく、チームの勝利のために価値ある一打を追い求めていくだけだ。
PROFILE あさむら・ひでと●1990年11月12日生まれ。182cm90kg。大阪府出身。[甲]大阪桐蔭高-西武09[3]-楽天19=17年。