ムードメーカーとして欠かせない存在となった大田
残した数字以上に大きなものをもたらした1年だった。
大田泰示は
日本ハムを自由契約となり、高校時代を過ごした神奈川の地で新たなスタートを切った。62試合の出場で打率.278、5本塁打、18打点はやや物足りない成績ながらも、チームを盛り上げるムードメーカーとして欠かせない存在となった。
鳴り物入りで入団した
巨人では大きな期待をかけられながら応えられず苦しんだが、移籍した日本ハムでは主力として躍動。酸いも甘いも知り、新天地で迎えた14年目は大半のチームメートが年下の環境ながら、誰よりも若々しく振る舞った。
「ベテランがベテラン風を吹かせてベンチにいるのと、率先してチームの先頭に立っていくのでは全然違う」
先発を外れてもベンチから大声を張り上げ、仲間を鼓舞した。ベテランが献身的な姿勢を見せれば、若手も続く。今季のチームの雰囲気の良さは12球団でも屈指だった。
プレーでも随所で大きな働きを見せた。6月30日の
阪神戦(横浜)では1点を追う9回に同点の適時二塁打を放ち、その後に
嶺井博希の右前打で本塁へ頭から突入してタッチをかいくぐる“神走塁”で劇的なサヨナラ勝ちを演出。8月9日の阪神戦(横浜)では代打でサヨナラ打をマークした。脚のケガに苦しみながらも、勝負どころでの貢献が光った。
1年前は新たなチームが決まるのか不安な時期を過ごしていた。その分、新天地では野球ができる喜びにあふれた。「来年は自分自身にもチームにも楽しみしかない」。確かな手応えを得て、プロ15年目に突入する。
写真=BBM