
文=大内隆雄
今年のプロ野球、早くも折り返し点を過ぎてしまったが、ここまでに記憶に残る大記録、珍記録と言えば(あくまで筆者個人の感想)、
田島慎二(
中日)の、開幕からの最多連続試合無失点記録「31」(3月26日
阪神~6月5日
楽天)。6月18日の
広島-
オリックス戦(マツダ広島)での
鈴木誠也(広島)の史上10人目の「2試合連続サヨナラ本塁打」。そして、6月25日の楽天-
ソフトバンク戦[koboスタ宮城]での
金刃憲人(楽天)の史上初の「2度目の1球勝利」、この3つである。
この3つのうち、どれが最も“難度”が高いだろうか。いずれも一生に一度あるかないかというほどの難しさだが、金刃の1球勝利2度は、ラッキーを超えた“神のみわざ”とでも言うべきもので、これだけでプロ野球ファンに一生覚えてもらえる珍記録。さて、この裏返しは1球敗戦投手だが、意外なことに2度やっている投手は過去1人しかいない。同点、走者なしで出てきて初球をホームランされ、交代。これが決勝点、といったケースはナンボでもありそうなのだが、2度やってしまったのは金刃と同じ左投手の
森浩二(元阪急、オリックス)のみだ。
1度目は84年6月30日の
ロッテ戦(西宮)。同点の6回、ワンポイントで登場の森は左のリーに初球を右翼二塁打され交代。代わった
山沖之彦が
落合博満以下に3安打され2点を失い、阪急はそのまま追いつくことなく敗戦。決勝点となった走者リーを出した森が敗戦投手となってしまった(3対5)。
2度目は89年7月22日のダイエー戦(平和台)。2点リードの8回、一死一塁で右の
岸川勝也に右投げの
伊藤敦規をぶつけたが安打され一、二塁。左の
山本和範となったので森の登板となった。しかし、初球を右前にタイムリーされ森は降板。代わった
山内嘉弘が四球のあと三塁打されるなど乱調で、結局この回、5点を与えてしまい、逆転のホームを踏んだ山本を出塁させた森が2度目の1球敗戦となった(4対7)。
写真は84年のキャンプでの森。2つの白球がこぼれた2つの黒星に見えてくる!?森にはイヤな記憶を思い出させて申し訳なかったが89年には40試合に登板。新生オリックスの貴重なセットアップだった。