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第49回社会人野球日本選手権大会

近藤壱来(JR四国) 社会人を代表する投手への意欲 26歳が胸に秘める「プロ」への思い

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JR四国・近藤は鳴門渦潮高、三菱自動車倉敷オーシャンズ、四国IL/香川を経て、23年から社会人野球でプレーしている[写真=佐藤真一]


 3つのチームを渡り歩いた異色の経歴を持つ152キロ右腕、JR四国の近藤壱来の闘志は衰えていなかった。チームは社会人日本選手権の1回戦(対三菱自動車倉敷オーシャンズ)で敗退。ブルペン待機していた近藤に登板機会は訪れなかったが、視線はすでに来年へ向けられていた。

「悔しいシーズンだったので来年、頑張ります。結果が何一つ出なかったので、全国でも勝てなかったですし、来年は勝てるように頑張りたい」

 鳴門渦潮高時代の最高成績は徳島県大会準優勝。3年夏は決勝で鳴門高・河野竜生(日本ハム)と投げ合い、力投したものの一歩及ばず、甲子園出場はならなかった。卒業後は三菱自動車倉敷オーシャンズへ。2年間プレーした後、野球部を離れ、社業に専任する1年間を過ごしたが、野球への情熱が尽きることはなかった。2020年に四国アイランドリーグ・香川オリーブガイナーズに入団した。力強いストレートと、鋭いスライダーを武器に2年目の21年は15勝を挙げる活躍で、最多勝とMVPを受賞。プロ入りへ胸を膨らませたが、吉報は届かなかった。

「やっているときは、ドラフトにかかるなと思っていたんですけど、実際、終わってみて考えてみたら、足りないところばかりだったな、と。自分はまだ全然、指名されるようなレベルではないなと思いました」

 3年目も最多奪三振のタイトルを獲得。厳しい環境の中でも腕を振り、四国を代表する投手へと成長した。「人間的にも、技術も体力も全部一回り伸びたかな、だから今、社会人野球ができていると思います。生活ができなかったので、独立のときが一番、しんどかったです。家賃も払えるか払えないか分からないみたいな中で、将来が見えなさ過ぎて……。でも、野球やるしかないというときが、一番しんどかったですけど、一番ギラギラしていたかと思います。何とかしてやろうと思っていました」

3、4勝で都市対抗V


 現在、所属するJR四国は昨年、入社した。野球だけだった独立リーグ時代と違い、社業もこなす。

「仕事しながらみんなでワイワイしながら全国で勝ちたいという思いを持っています。周りは自分たちより上のチームばかりなんですけど、そこに勝とうと思ってみんな必死に力合わせている感じですね」

 新たな環境、仲間とともに臨んだ昨年の都市対抗では、大仕事を果たした。前年準優勝の東京ガスとの1回戦を11回1安打無失点で、チームのサヨナラ勝ちを呼び込んだ。

「まぐれです。もう1回やれ、と言われてもできないので……。それがもう一回、できるようにしていきたいなと思います」

 昨年の社会人日本選手権でも3試合に先発してチームのベスト8入りに貢献、大会の優秀選手に選ばれた。今年も社会人日本選手権四国地区予選では、12回無失点の好成績を残した。来年は27歳となるシーズン。「どんどん歳は取ってきているので、体に気をつけながら体を強くしていきたい」。プロへの思いも消えてはいない。「僕が選ぶものではないので。それは自然と野球がうまくなっていって……、あきらめました、とは言わないでおこうと思っています。来年は社会人を代表するピッチャーになって(ドームで)3勝、4勝して優勝します」。喜びは苦しんだ分だけ、でかくなる。(取材・文=小中翔太)

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