
ヤマハが2016年の第42回大会以来の優勝。Vの瞬間は喜びを爆発させた
50回の節目を迎えた社会人野球日本選手権は強打を誇るヤマハが8大会ぶり2度目の頂点に立った。準決勝までの4試合でチーム成績は打率.353、OPSは.971。都市対抗ベスト4、JABA大会を2つ制した強豪はプロレベルの好投手がひしめく社会人野球の全国大会でも圧倒的な力を発揮した。戦力の充実ぶりは大会を通じて際立っていた。
西部ガスとの1回戦は17安打11得点で8回
コールド勝利。JR東海との2回戦も終盤に2度ビッグイニングを作って2ケタ得点を挙げた。破壊力ある打線について主砲・
網谷圭将(千葉英和高)はこう明かす。
「若手、中堅、ベテランがいいスパイスになって、若手は中堅、ベテランに追いつき追い越せって気持ちでやっています。僕らもベテランの人も必死にやっているっていう、この競争みたいなところが、相乗効果として生まれてこの日本選手権につながったのかなっていう感覚ですね」
一番の矢幡勇人(専大)はコーチ兼任ながら高い打撃技術は健在で、昨年まで下位打線を打っていたショート守備に定評のある高卒5年目の
相羽寛太(静岡高)が三番を任されるまでに成長。関西六大学リーグで別格の存在感を示していた森川凌(神院大)が入社1年目から中軸を任され、主将・
大本拓海(立命大)が六番に入り打線に厚みを加える。普段の練習では昨年まで現役だった九谷青孝コーチ(東農大)や31歳で投手陣最年長の波多野陽介(東北福祉大)が打撃投手を務め、マウンドより近い距離から変化球を交えて実戦さながらの球を投げ込んだ。練習の質の高さに加えて、ヤマハには歴代のOBたちから受け継いだ豊富な量をこなす文化がある。そうして磨いた長打力は、僅差の展開でより輝いた。NTT東日本との準決勝は2点ビハインドの5回に相羽の2ランで追いつくと、一死二、三塁から大本の内野ゴロの間に勝ち越しに成功。8回に同点とされたが、3対3の9回二死二、三塁のチャンスに網谷が左翼席へ値千金の3ランを放った。効果的な2発で決勝進出。ファイナルの舞台では、ベテランの意地と技術が試合の均衡を破った。
過密日程に歓迎ムード
日本生命との決勝は0対0の5回、一死満塁のチャンスに矢幡はボール気味のスライダーに続けて手を出し、2球で追い込まれる。苦しいカウントになったが、フルカウントまで持ち込み、最後は低めボールゾーンのストレートを逆方向にはじき返して2者をホームに迎え入れた。
「満塁の場面だったので見逃せば押し出し1点で先制だったんですけど、そこで押し出しと思ってその1球を迎えたら、ストライク球に手が出ないと思ったので、振ることを意識していました。振りにいった瞬間は『うわ、めっちゃボール』って思ったんですけど振るって決めていたので、そこは体が食らいついてボールに当たってくれたなと思います」
派手な長打力だけではない。こうしたしぶとさもある。しかも打力が看板のチームでありながら、最優秀選手に選ばれたのは投手だった。エース左腕・佐藤廉(共栄大)が先発にリリーフにフル回転。5試合すべてに登板し、決勝は1失点で完投した。制球力と投球術が持ち味で決勝は8回までに奪った三振は0ながら、9回のピンチで連続三振。見事な1失点完投勝利で優勝に大きく貢献した。「佐藤に任せたと言っていただいたので絶対、点をやらないつもりでした。あの場面は三振を取らなくちゃいけない場面だったので腕を振って三振取れてよかったです」。投打ともに戦力層が厚い。トーナメント表でヤマハの名前があったのは一番右端。7日間で5試合を戦う過密日程など、誰も気にしない。むしろ初優勝を飾った2016年と同じだと歓迎ムードすら漂っていた。

1回戦から決勝まで全5試合で登板。佐藤廉がフル回転し、決勝では1失点完投勝利を挙げることができた
胴上げのタイミング
2年前に都市対抗で準優勝を果たすなど、近年は安定した好成績を残していた。日本一は手の届くところにあると誰もが感じていたから今年は都市対抗予選を突破しても、JABA大会を2つ制しても胴上げをしなかった。シーズン最後の大舞台、日本選手権を制して胴上げされた申原直樹監督(中大)は「5試合通じて毎日、選手が成長する姿を見せてくれて、最高な選手たちです。もう感無量ですね。本当、幸せもんですねっていう、本当それだけです。最高のメンバーに恵まれて」と、喜びをかみしめた。

申原監督はナインの手によって胴上げされた
大本主将は「もちろん優勝して終わりじゃなくてこれを始まりにできるように。これを自信にして今度は都市対抗優勝をまた目指して、常勝軍団を掲げてやってきたので、それを達成できるように。まだまだ強くなるチームだと思う。どんどん進化していきたいと思います」。来春入社予定の選手もプロが狙える猛者ぞろい。ヤマハの黄金時代到来である。(取材・文=小中翔太 写真=松村真行)

ヤマハの主将・大本がダイヤモンド旗を手にし、スタンドに報告した
■第50回社会人野球日本選手権大会結果 
※丸数字は延長またはコールド回数