四国で大きく背中を押されている。ファン、家族、恩師。活躍の先にある姿を見せたい。 リポート=高田博史 
新人年ながら高い打率でアピールする愛媛・塚本[写真=山田次郎]
駆けつけた家族の前で
ホーム開幕2連戦(4月13、14日、松山市)で、愛媛・
塚本浩平(名古屋商科大)が躍動する。2試合連続の複数安打、連続安打を6試合に伸ばし、打率を.379(4位、18日終了時)まで上げた。
実家のある静岡から両親と弟が。さらに
広島・尾道で暮らす祖母、恵子さんも応援に駆けつけてくれていた。
「こんな大きな舞台でヒットとか、活躍してるのを見られただけで、来てよかったわあ」
目の前で見た孫の活躍に、恵子さんも満足そうな笑顔を浮かべている。
今シーズン入団したルーキーの1人だ。ファンや子どもたちが声を張り上げ、「頑張れーっ!」と応援してくれる。これまで自分とチームのためだけにやっていた野球が、劇的に変わった。
「ファンの人が応援してくれる。1つそういうのが増えただけで、こんなにも奮い立たせてくれるのかって」
名古屋商科大時代、2つ上の先輩に
茶野篤政(
オリックス)がいた。茶野が四国リーグで首位打者を獲得した、2022年シーズン最終戦(22年9月21日、徳島市)を観戦している。
オリックスに入団し、あっという間に駆け上がっていった茶野の姿が、心の底からうらやましく思えた。「すごいなあ」という周りの声よりも、「早く俺もやりたい! やってやりたい!」という気持ちのほうが上回っていた。
2人の恩師の言葉は
名古屋商科大・
赤松幸輔監督(元オリックス)から「弓岡さん(
弓岡敬二郎監督/元阪急・オリックス)に守備を磨いてもらえ!」と言われ、愛媛の門を叩いた。「楽をするな」。そんな言葉が、今も耳にしみついている。
「『もう1歩、踏み込めただろう!』『もっといい1歩目、切れただろう!』。捕ってアウトにしてOKじゃなくて、『それで満足するな』みたいな感じですね」
弓岡監督も「1歩目をどう切るかでその後のプレーが違ってくる」と話す。赤松監督自身、オリックス時代にコーチだった弓岡監督の指導を受けている。2人の恩師の言葉は一致していた。
NPBに行く。そのために首位打者のタイトルをつかみ取る。あの日、茶野が残した打率.316を超えたい。
昨夏、野球が好きで、広島の大ファンだった祖父・義憲さんを亡くした。
「『浩平がカープに入ったら、キャンプ見に行きたいなあ』って、ずっと言ってて。そう言ってた矢先で。すごく応援してくれていたので……」
NPBで活躍する姿を見てもらえなかった。だが、祖母や家族には見せられるかもしれない。今回は、家族に勝利を届けることができなかった。
「次、勝ちたいですね」
勝ってヒーローインタビューを受ける。スタンドで見守る家族に向かって大きく手を振ることが、次の目標になった。
PROFILE つかもと・こうへい●2001年12月8日生まれ。176cm77kg。AB型。静岡県出身。島田商高から名古屋商科大。大学では香川、福島(BCL)でプレーした赤松幸輔監督(元オリックス)の下、主将も務めた。一番・遊撃手としてバットコントロールと走塁技術の高さに自信を持つ。9試合を終え球団トップの打率.379(4位)2打点、2盗塁、出塁率.550(5位、18日終了時)。