かつて5年連続で最多奪三振に輝いた男は昨季、抑えに転向した。未経験のポジション。難しさを感じながらも見事タイトルを獲得。配置転換が間違いでなかったことを積み上げたセーブ数で証明した。仲間がつないだ勝利のバトンを落とさず、試合を締める喜びは格別。先発時代とは違ったやりがいを、今年も味わい尽くすつもりだ。 取材・構成=阿部ちはる 写真=桜井ひとし、兼村竜介 試行錯誤の1年で得たもの
入団11年で8度の2ケタ勝利。楽天のエースとして君臨していた則本昂大が、「(プロ野球人生が)終わるまで後ろで投げたいというつもりで、その覚悟で抑えを引き受けた」と2024年から抑えに転向した。並々ならぬ思いで臨んだシーズンはリーグ最多の32セーブを記録。大きな変化の中で走り抜けた1年を振り返る。 ――クローザー転向1年目でのタイトル獲得、おめでとうございます。
則本 ありがとうございます! 6年ぶりのタイトルなのでお久しぶりですね!
――前回は18年の最多奪三振。そして今回は最多セーブです。タイトルが決まったときは喜びと安堵(あんど)のどちらが強かったのでしょうか。
則本 一安心という思いはありましたね。開幕当初は正直、タイトルは全然頭に入れてなかったですし、獲れるとも思っていなかったのですが、シーズンが進んでいく中で他球団の抑えの選手が離脱するなども重なって、たまたま自分がその場所で投げ続けていただけ。セーブシチュエーションで僕につないでくれたチームのおかげやなと思いますね。
――
松井裕樹投手(パドレス)が抑え転向1年目に挙げた33セーブを目標にする中、あと一つ届きませんでした。
則本 松井のすごさをあらためて感じましたし、その数字に追いつけ、追い越せでやっていきたいですね。
――収穫と課題が見つかったシーズンと振り返られていますが、具体的にはどういった部分でしょうか。
則本 1年間、中継ぎとしてやっていく中での体と心のケア、そういった部分での安定感とかブルペンでの準備の仕方も含めていろいろ手探りで、あらゆるチャレンジをしてきた1年だったので、そこを経験できたのは収穫だったなと。ただ、自分で落とした試合があるので、そこは反省点。セーブ機会での失敗をゼロにすることが、やはり抑えにとっては一番大事だと思うので、そこが課題ですね。
――1週間に1度登板する先発と毎日準備する抑えとでは疲労感にも違いが出たのではないでしょうか。
則本 うーん。よく聞かれるのですが、あまり分からなくて。それにもう、先発のことは覚えてないんですよね! (抑えは)1年しかやっていないんですけど(笑)。ただやっぱり、1年通してずっとベストな状態が続くことはない中で、野手もそうですが、中継ぎはいつ自分の出番が来るか分からない。良くても悪くても抑えないといけないのが仕事なので、そこの難しさはありましたね。体の疲労感、疲労度とかの比較は正直難しい。とにかく中継ぎも……大変でしたね。
――シーズン中のケアの仕方にも違いがあったのではないでしょうか。
則本 そうですね。今まであまりやらなかったケアをやることもありました。体のメンテナンスに関しては・・・
この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。
まずは体験!登録後7日間無料
登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。
登録済みの方はこちらからログイン