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惜別球人2024

増田達至(元西武) 引退惜別インタビュー 勝利を呼んだリリーバー「勝利に結びつけたときの喜びは苦しさがある分、大きかった」

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背番号14がマウンドに立てば誰もが勝利を確信した。2019年の連覇時には胴上げ投手になり、セットアッパー、クローザーでもタイトルを獲得。“負けない気持ち”を持ち続けた右腕は12年間、ライオンズのリリーフとして存在感を発揮した。
取材・構成=小林光男 写真=BBM

引退試合では全球ストレート。3球目を岡大海に左前打とされるも全力で投げ切った


衝撃を受けたサファテの直球


 今年4月で36歳。ベテランの域に入り、毎年1年勝負の気構えでシーズンに臨んでいた。昨年は40試合登板で4勝4敗19セーブ6ホールド、防御率5.45。キャンプから今年に懸ける強い決意があったが、成績が伴ってこない。12試合登板で0勝2敗3ホールド、防御率4.09。6月15日に一軍選手登録を抹消されると二軍暮らしが続く。潔く8月には引退を決断。9月28日のロッテ戦(ベルーナ)がラストゲームとなり、盛大な引退セレモニーでチームメート、ナインから見送られた。

――引退試合から1カ月がたちましたが、現在の心境は。

増田 これまで日常に野球がありましたから寂しさはあります。今は朝起きて出掛けなくてもいいし、家でゆっくりしていることのほうが多い。子どもたちは僕が毎日、家にいるのでうれしいと思っているみたいです。これまでの野球人生を振り返るようなこともないですし、ゆっくりしながらテレビを見て、お昼になったらご飯を食べて、と。毎日、休日のような過ごし方をしています。

――プロ入り当初を考えると、12年もユニフォームを着続けることができると思いましたか。

増田 正直、こんなに長く現役生活を続けることができるとは思わなかったですね。1年目、南郷キャンプで練習をスタートしたとき、ブルペンで周りの先輩、後輩のピッチングを見て「プロでやっていけるのかな」と感じました。初日からどんどんピッチャーが投げていっていたので。

――特に衝撃を受けたのは。

増田 スピードです。全然違いました。僕は入団当初からリリーフでしたが、当時はちょうど広島から移籍してきたばかりのサファテがいました。サファテが投げ込む力のあるボールを見て、一番衝撃を受けましたね。この輪の中に割って入っていけるのか。相当頑張らないといけないと気を引き締めました。

――強烈な投手がいる中で生き残りをかけるために試みたことは。

増田 僕も社会人時代から真っすぐを軸に抑えていく投手だったので、そこをもう一度取り戻すというか、見直すというか。実は春先、まったくピッチングの状態が上がらなかったんです。だから、フォームのことなど、いろいろな部分で試行錯誤を重ねましたね。3月には左脇腹をケガしたので、5月下旬くらいから投げ始めて、夏くらいからしっくりくるようになりました。

――増田さんが投げるストレートはカットするのが特徴でした。

増田 真っスラするというのは、まったく意識していませんでした。ボールを受けてくれていた銀さん(炭谷銀仁朗)、上本(上本達之)さんが「結構滑っている」と話してくれたことがきっかけです。それで自分の武器にしたような感じです。

――理想のストレートはあったのでしょうか。

増田 当初はスピードを求めていました。1年目もまず、スピードを取り戻すことに力を注いで。そのころは、まだ150キロを超えるストレートを投げる投手は多くなかったので、まずはそこを目指していました。でも年々、「スピードだけではない」ということを感じるようになりました。たとえ球速が出ていても、打たれることが多かったですから。いろいろと経験を重ねていくうちに、ストレートには空振りを取れるキレ、制球力を求めるようになりましたね。

セットアッパー、クローザーで違う意識


 プロ野球人生のほとんどをリリーバーとして過ごした。セットアッパー、クローザーと大きなプレッシャーのかかる場面を任されたが、つらかったことも多い。それでも右腕を振り続けられたのはファン、そして家族の存在があったから。通算194セーブと過去10人しか記録していない200セーブに届かなかった。「悔いがないと言えばウソになる。でも自分の中では精いっぱいやった」。任された場面で手を抜かずにやり抜いたのは確かだ。

――プロ初登板のことは覚えていますか(2013年6月13日中日戦=西武ドーム)。

増田 同点の延長11回に登板したんですけど・・・

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惜しまれながらユニフォームを脱いだ選手へのインタビュー。入団から引退までの軌跡をたどる。

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