試合終盤のピンチの場面で出番がやってくるケースが多い。チームの勝利のため、意気に感じてマウンドに上がる。打者との勝負に集中して、劣勢の展開を自チームのペースに持ち込んでいく。 取材・文=大平明 写真提供=シティライト岡山野球部 
チームメートが声をかけてくれるとはいえ、マウンドは孤独。最後は自分の力だけが頼りである
「上を目指すなら『もう一回、ピッチャーに挑戦したい』と思ったんです」
稲葉虎大は大学入学時を振り返った。中学時代は投手と野手を兼任していたが、関西高時代は主に一塁手としてプレー。2年秋から投手へ転向したが「3年春の練習試合でボコボコに打たれて
コールド負けしてしまい、野手へ戻ることになりました」と、投手としてプレーしたのは、わずかな期間だけに終わった。
進学した東海学園大では「野手としては、守備に自信がなかったですし、投手としてはほとんど何もしていないような状況だったのにある程度のボールが投げられていたので、大学入学を機に投手をすることにしました。ただ、当時は『行けるかなあ』くらいの気持ちだったんですけれど……」。成功の確信があったわけではなかったが、再転向を決断した。1年秋のリーグ最終戦でデビューしている。
「ピッチャーとして経験していないことがいっぱいあったので『言われたことはなんでもやってみる』という気持ちで練習していました。本当に何でもやってみたのですが、投げ込んでいくなかで自然と技術や体力が備わっていって、投手としての体の使い方を覚えていったんです」
3年時には投球する際の体のバランスを整えてフォームを改善したことで、高校時代に最速142キロだったストレートが秋には大台の150キロに到達した。
「以前は上げた左足を前へ踏み出していくとき、軸足になる右足のヒザを曲げていて体が少し沈むような感じで投げていました。そのフォームを一から作り直し・・・
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