昨夏の甲子園で同校最高成績となる8強進出。大舞台でプレーし、高校卒業後のプロへの思いが強く芽生えた。次のステージへと羽ばたき、発信したいことがある。 取材・文・写真=井上幸太 
プロ志望届を提出したおかやま山陽の147キロ右腕・三浦[左]と、内野のカナメを務めた田内[右]。ポテンシャルが高い
今から約1年前のことである。おかやま山陽高を率いる堤尚彦監督は、当時の1、2年生を前に、熱を込めて語りかけた。
「前のチームと同じことをしていても進歩がないし、何より面白くないじゃない。だから、
イチローさんや大谷選手に振り向いてもらえるように、甲子園で優勝するって目標を立てたんでしょ?」
新チームが発足して間もない時期のミーティングだった。この2023年、おかやま山陽高は春夏通じて3回目の出場で甲子園初勝利を挙げた勢いそのままに、8強に進出した。この「甲子園8強」は、堤監督が、常々語っていた目標だった。
ただ、「甲子園で勝つこと」がゴールではない。堤監督は、青年海外協力隊員としてジンバブエ、ガーナで野球普及活動に従事した経験を持つ、高校野球指導者としては異色の存在だ。発展途上国における「野球」に触れたことで、「野球は世界的に見ればマイナースポーツ」という、日本にいては気づけない現実を目の当たりにした。そして、「世界に野球を普及すること」を、自身の命題にしたのだ。
その経験から、中古のグラブなどの野球道具を途上国に発送する活動を10年以上にわたって続けている。注目度の高い全国大会で勝ち進むことで、おかやま山陽高が取り組む野球普及活動が、メディアを通じて広く知られることになる。「野球離れ」が叫ばれる今、警鐘を鳴らし、各々できる野球界への貢献を呼びかけるためにも甲子園で勝つ必要があった。
目論見どおり、甲子園で白星を挙げるたびに、堤監督の唯一無二の野球人生と普及活動の紹介がメディアをにぎわせた。
ただ、一定の手ごたえを得ると同時に、自分たち以上に影響力を持つ野球人の力が必要だとも感じた。そこで、イチローや
大谷翔平に「振り向いてもらう」。彼らに普及活動を知ってもらい、拡散してもらおうと、次なる目標を立てたわけだ。
この目標には、一つの補足が添えられていた・・・
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