今季、首位争いを演じる広島で、序盤戦の先発ローテを支えた。立場を築こうと試行錯誤を続ける篠田純平。繰り返してきた挫折は左腕を強くする糧となった。7年目のシーズンに新たなスタイルで挑んでいる。 文=坂上俊次(中国放送アナウンサー) 写真=松村真行 道も分からない中、遠征先の栃木の球場周辺をひたすら走り続けた。練習試合で5回持たずにノックアウト。前橋商高の富岡潤一監督は、試合中ではあったが、いわゆる「罰走」を、降板した左腕に命じた。多感な高校生の時期である。
「自分への悔しさ」、「ランニングを命じた監督への腹立たしさ」、そんな気持ちがあってもおかしくない。だが、彼は違った。「チームの雰囲気を悪くしてしまった。僕が怒られたことより、チームメートに申し訳ない」。どこまでも、仲間や周囲の人のことを考えた。
そんな男である。だからこそ、期待を裏切りたくないのだ。今年のチャンスだってそうである。ドラフト1位で入団し、左の先発投手の一人として期待されてきたが、2010年の6勝をピークに成績は低迷。昨シーズンはプロ入り初の0勝に終わった。
篠田純平の危機感はピークに達していた。しかし、そんな彼を支える人がいる。期待を寄せるファンもいる。裏切るわけにはいかない。だからこそ、先発のマウンドを丁寧に務める。ピンチであっても、調子が良くない日でも、一球一球を丁寧に粘り強く投げ続ける。

▲5月9日の中日戦[マツダ広島]は7回1失点の好投で今季3 勝目。決勝打の松山とともにお立ち台に上がった
繰り返した挫折 キャンプは二軍スタートだったが、フォームを変え、投球の考えを深めた篠田は、快進撃のカープにあって、先発ローテーションの中核を担うようになった。
人を思いやる優しい気持ちは、いつしか責任感となって、彼のピッチングに安定感と信頼感をもたらした。
前橋商高時代は・・・
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