『ベースボールマガジン』で連載しているプロ野球選手の第2の人生応援プロジェクト「
パンチ佐藤の漢の背中」。現役を引退してから別の仕事で頑張っている元プロ野球選手の下をパンチさんが訪ね、お話をうかがってまいります! 今回は90年代のカープで中継ぎ投手として活躍し、現在は東京・代官山で「2-3 Cafe」を営むパティシエの
小林敦司さんをお訪ねしました。
一番人気のチーズケーキは焼き方にこだわりあり!

小林敦司氏(左)、パンチ佐藤
パンチ 実際ケーキ屋で修業を始めてから、何年後にここをオープンしたの?
小林 途中、母が熱海でやっていたカフェを手伝った時期も含めて、全部で10年くらいかかりましたね。
パンチ 最初に当たった壁は、どんなこと?
小林 代官山といえば皆さん、おしゃれで人が集まる街と思っていらっしゃるでしょうが、それは土日だけで、平日は人が少ないんです。やっぱり週5日、サラリーマンの方々がワーッと来てくださったほうが、利益は出ますね。調査不足でした。
パンチ それはどこで好転したの?
小林 現実的に言うと、近所にT-SITE(蔦屋書店を中核とした生活提案型商業施設)ができてからです。ウチが11年4月にオープンして、12月にT-SITEができました。それで代官山に人が集まるようになって、ウチにもお客さんが増えました。
パンチ そこ、僕も行ったわ(笑)。
小林 その後、僕がテレビに出て、また皆さん来てくださるようになりました。それまでは自分自身、元プロ野球選手ということをあまり謳っていなかったんです。今のように“野球感”もカープ色も出していなくて。テレビに出てから、カープファンの方がグッズをいろいろ置いていってくださるようになったんですよ。
パンチ ケーキの一番人気は?
小林 チーズケーキです。焼き方にはこだわりを持っています。
パンチ それは言える範囲で、どんなところですか?
小林 何度も焼き直すところです。1回30、40分くらい焼いたものを出して、ちょっと寝かせてまた焼くとか。出来上がりがギュッとなるよう、自分なりに工夫しました。
パンチ 食事も出しているんだよね。
小林 ランチのおススメはオムライスで、あとは生パスタも作ります。夜は予約があれば、宴会や鍋をやっています。トマト鍋で、スープが赤いので通称『カープ鍋』。他のメニューもあるんですが、ほとんどの方がトマト鍋を選びますね。
パンチ いつも気をつけているのは、どんなところですか。
小林 常日ごろから、すべてにおいて完璧を求めるようにしています。野球なら3割打てばいいから、7割は失敗も許される。でもウチで10人のお客さんのうち1人でも「まずい」と言えば、一気にウワサが広まってダメになってしまう。だから、常に10割を目指します。完璧は無理かもしれませんが、完璧を求めない限り、完璧には近づけないと思いますので。食べていただいたすべての方に「おいしい」と言ってもらえるように、と思ってやっています。
元プロ野球選手ということを抜きにお客が来てくれたら本物

代官山のおしゃれなカフェのパティシエが、元プロ野球選手だと知らないお客さんも多い。ランチもやっている
パンチ イメージどおりのお店ができて、次の目標はどこに置いている?
小林 今までは、大好きなハワイでお店を出したいと思っていたんです。だけど調べれば調べるほど大変なので……。ただ楽しいところではあるので、時々休暇を取って行けるようにはしたいですね。ここは僕のダメなところなんですが、店を大きくしたいとかそういうところがなくて、チーズケーキとコーヒーだけで勝負できるお店でいいんです。あとは昨年、ゆめタウンというところの通販でチーズケーキの監修をして、これはカープが強くなったから僕も便乗させてもらったような形ですが、自分はこういうことをやりたくて。例えば航空会社などから「監修してもらえないか」と依頼してもらうことも夢ですね。
パンチ 僕も12月から、FM立川のレギュラーをもらったんだ。一生懸命やっていると、それを見ていて、声を掛けてくれる人がきっといるからね。
小林 はい。僕もこのゆめタウン、自分が売り込むことなく向こうから来てくれたのでうれしかったです。
パンチ 僕もそうなんだよ。営業なんかしたことないのに、電話がかかってきてね。
小林 やっぱりそういうのが本物だと思っていますので。元プロ野球選手ということを抜きにお客様が来てくれたら、本物なんだろうなと思います。
パンチ 最後に、引退する選手たちに送るメッセージをお願いします。
小林 割り切りを早くしたほうがいいですね。今は独立リーグとか社会人とか、野球を続けられる環境がたくさんあるので、「NPBがダメなら……」と思いがち。だけど、それも限られているので、やはり野球とは違う何かの楽しさや苦しさを、早く社会に出て味わってほしいと思います。
パンチの取材後記
この取材を通して毎回感じるのは、「うまく切り替えた人が、早くスタートを切れる」ということ。戦力外通告、あるいは引退となったら、いち早く切り替えることが第二の人生、最高のスタートにつながるんです。
また一生懸命、真っ黒になって働いて。そして新たな喜びを見つける。プロ野球はプロ野球でよかったけれども、「今のほうが幸せですよ」と言えるためには、早く切り替えることが大切だな、と思います。
それから野球でもそうだけど、「こういうものを作りたい」というイメージを持って生きていくと、どんな壁でも破れるんだよな! 野球でもどんな世界でも、常に手を抜かずにやっていけば、道はきっと拓けてくる。小林君も僕も頑固で不器用だけど、真面目を取り柄にコツコツ、これからもお互い頑張っていきましょう!
<了>
●小林敦司(こばやし・あつし)
1972年12月8日生まれ、東京都出身。拓大紅陵高からドラフト5位で91年
広島に入団。サイドスローに転向し、5年目の95年にプロ初勝利を含む16試合に登板。97年には30試合に登板し、防御率2.20の好成績をマーク。同姓の
小林幹英投手につなぐ「あつかんリレー」が話題となる。01年
ロッテに移籍も、同年限りで引退。59試合登板、1勝1敗0セーブ、防御率4.40。現在は「2-3 Cafe」(東京都渋谷区猿楽町24-1 ROOB2-1F)のプレーングマネジャーとして料理の腕を振るう。
●パンチ佐藤(ぱんち・さとう)
本名・佐藤和弘。1964年12月3日生まれ。神奈川県出身。武相高、亜大、熊谷組を経てドラフト1位で90年
オリックスに入団。94年に登録名をニックネームとして定着していた「パンチ」に変更し、その年限りで現役引退。現在はタレントとして幅広い分野で活躍中。
構成=前田恵 写真=山口高明