プロ野球史を彩ってきた数多くの名選手たち。生まれた世代ごとに週刊ベースボールONLIN編集部がベストナインを選定して、“史上最強世代”を追いかけてみる。 多彩で盤石の投手陣
通算400勝という不滅のプロ野球記録を残した金田正一を筆頭に、充実した投手陣を擁する1933年生まれの世代。タイトルホルダーが並ぶ投手陣において圧倒的な実績を残しているのは、やはり金田だ。そのプロ野球記録は通算400勝を皮切りに、通算4490奪三振、64回1/3連続無失点など、今後も破られることのなさそうなものばかりだ。
【1933年生まれのベストナイン】(1933年4月2日〜34年4月1日生まれ)
投手 金田正一(国鉄ほか)
捕手
土井淳(大洋)
一塁手
デイブ・ロバーツ(アトムズほか)
二塁手
森下整鎮(南海)
三塁手
中西太(西鉄)
遊撃手
吉田義男(
阪神)
外野手
町田行彦(国鉄ほか)
大和田明(
広島ほか)
宮本敏雄(巨人ほか)
指名打者
ウィリー・カークランド(阪神)
バッテリーを組むのは、初の日本一に輝いた60年の大洋で司令塔を務めた土井淳。インサイドワークに長けた名捕手だが、土井との相性で軍配が上がるのは
秋山登だろう。土井とは明大時代からバッテリーを組んでいた名コンビで、若手時代は快速球を武器に奪三振も多かったが、その60年には抜群の制球力と打たせて取る投球術で最優秀防御率に輝き、弱小チームを日本一に導いた右のサイドハンド。若手時代は荒れ球で、長身から剛速球とドロップを投げ下ろして三振の山を築いた左腕の金田とは対照的な存在だ。
同じく60年、一方のパ・リーグで最多勝、最優秀防御率の投手2冠で優勝に貢献したのが左腕の
小野正一(大毎ほか)も同世代。右腕では備前(大田垣)善夫(広島)や
河村英文(久文。西鉄ほか)、
島原幸雄(西鉄)に
三浦方義(大映ほか)、背面投げの
小川健太郎(
中日ほか)ら、さまざまなタイプが並んでいる。
打線も充実のラインアップ

西鉄・中西太
打線も負けず劣らず、長打力に機動力を兼ね備えた豪華な布陣となっている。金田が苦手と公言していた唯一の打者が遊撃にいる吉田義男。「捕る前に投げる」という評価が大袈裟ではないほどの名遊撃手で、内野陣の要となる存在だ。
吉田と二遊間を組むのが森下整鎮(正夫)で、打順でも一、二番でコンビを組んで打線の機動力を担う。若くして引退したため通算成績では及ばないが、56年に新人では初のフルイニング出場を果たした二塁手の
佐々木信也(高橋ほか)も同世代。3度のアキレス腱断裂もあった森下のピンチを補って余りある実力者だろう。
一塁にいるロバーツは68年に40本塁打を放った強打の助っ人。外国人選手では爪楊枝をくわえた姿で人気を博した指名打者のカークランド、外野にはハワイ出身の日系人で2度の打点王に輝いた“エンディ”宮本敏雄もいる。町田行彦と大和田明(明良)は、ともにサイクル安打も達成した強打者。それぞれの好不調を見ながら日替わりでクリーンアップを組むのもいいだろう。
そんな強力打線でも、不動の四番打者は中西太だ。故障や若くして兼任監督となったこともあって「ワシの現役は勤続7年」(中西)と活躍した期間は長くはなかったが、この世代で唯一の通算打率3割という確実性に加え、すさまじいスイングスピードから弾丸ライナーのままスタンドに飛び込む本塁打を連発して5度の本塁打王に輝き、西鉄黄金時代の大黒柱となった歴代屈指の強打者だ。
投打にスキなし。すべての世代のドリームチーム対抗戦では、間違いなく優勝候補として挙げられる世代と言えるだろう。
写真=BBM