長いプロ野球の歴史の中で、数えきれない伝説が紡がれた。その一つひとつが、野球という国民的スポーツの面白さを倍増させたのは間違いない。野球ファンを“仰天”させた伝説。その数々を紹介していこう。 ある思いを秘めてマウンドへ
1987年6月11日、熊本藤崎台での
中日−
巨人戦。5回の登板し、2イニングを無失点に抑えたセットアッパー・
宮下昌己は、ある思いを胸に秘め、7回のマウンドに上がった。
試合は0対4で、ほぼ決まってしまった。おそらく、この回で自分はお役御免となる。巨人は先発の2年目、
桑田真澄が内角に打者をのけぞらせるようなボールをどんどん投げていた。打者ではクロマティが内角を攻めるたびに威嚇してくる。このまま終わっていのか――。
宮下の球はクロマティの背中に当たった。ただ、頭近くではなかったし、向かってくるかもとは思ったが、マウンドまでは来ないだろうと思ったという。しかし、クロマティは一直線にやってきて顔面に右ストレート。その後、両軍入り乱れての大乱闘になった。
それでも宮下はいま「言い方は悪いけど、死球もいい思い出ですよ。いまでも年に一度くらいは取材がありますからね」と笑っている。
写真=BBM