いよいよ第100回の大きな節目を迎える夏の甲子園。その歴史にこそ届かないが、80年を超えるプロ野球を彩ってきた選手たちによる出身地別のドリームチームを編成してみた。優勝旗が翻るのは、どの都道府県か……? ドリームチームを超越したバッテリーも
面積の広さは47都道府県で2位。冬の寒さは厳しいが、夏はフェーン現象が起きると気温が急上昇することもあるものの、熱帯夜が少ないなど、全国的には過ごしやすいほうだろう。東日本大震災では各地が津波で甚大な被害を受けたが、親潮と黒潮がぶつかる三陸沖は世界三大漁場の一つとされ、水産業も着実に復興の道を歩みつつある。
多くの政治家を輩出している岩手県だが、出身有名人の筆頭は宮沢賢治だろう。その創作世界に欠かせない賢治の造語「イーハトーブ」は岩手県をモチーフにしたとか。一方、日本国内では簡単に届きそうにないが、世界を舞台に知名度を上げているのが大谷翔平だ。
【岩手ドリームチーム】
一(中)
阿部成宏(近鉄ほか)
二(遊)
白坂長栄(
阪神)
三(二)
銀次(
楽天)★
四(右)大谷翔平(
日本ハム)
五(三)
畠山和洋(
ヤクルト)★
六(左)
小田野柏(高橋ほか)
七(一)
煤孫伝(大東京)
八(捕)久慈次郎(プロ経験なし)
九(投)
菊池雄星(
西武)★
(★はNPB現役)
エンゼルスでも“二刀流”で大活躍、「マンガのよう」と評されることもある大谷翔平だが、ここでは少し岩手県にちなんで「童話の世界に出てきそう」と言い換えてみたい。というのも、大谷が投げたところで、受けるプロ野球選手が不在。ここではドリームチーム以上のイーハトーブということで、社会人野球の伝説的な捕手で、日米野球では
沢村栄治(
巨人)とバッテリーを組み、巨人で初代主将となる可能性もあった久慈次郎を司令塔に据えてみた。
一塁にいる煤孫伝(すすまご・つとう)はプレーヤーとして以上に珍名選手として球史に名を残す変わり種。近年は一塁を守ることが多くなっているが、現役の銀次、畠山和洋が、それぞれ経験豊富な二塁、三塁へ回った。
不動の遊撃手は白坂長栄。
吉田義男(阪神)の前に阪神で正遊撃手を務めた名手で、吉田のプロ入り後は二塁に回って鉄壁の二遊間を形成した。
外野は初優勝へと突き進んだ時代の近鉄を支えた阿部成宏(成行)を当時と同じ中堅に置き、その両翼が2人の“二刀流”。左翼の小田野柏も投手として5勝を挙げた外野手で、層の薄い打線を支えるべく、ここでは右翼が大谷だ。
やはり当時と同じリードオフマンとして阿部が打線を引っ張り、俊足堅守に犠打も巧みだった白坂が続く。打撃タイトルこそないが巧打が持ち味の銀次、タイトルとは別次元にいる大谷、2015年の打点王でもある畠山のクリーンアップは強力だ。戦前のプロ野球を知る小田野と煤孫に久慈が続く下位打線も底力がありそう。役割分担も明確で、打線は実在するチームのような戦力バランスだ。
獅子の左腕エースが先発のマウンドに
西武・菊池雄星
もちろん大谷がマウンドに上がる場面もあるだろうが、エースを現役の菊池雄星に任せれば戦力もグッと厚みを増す。甲子園を沸かせながらプロでは苦しみ、それでも着実に成長して18年はチームの快進撃に貢献。大谷とは違った形で夢を描く獅子のエース左腕だ。
スターターは菊池と大谷の左右両輪に、右腕の
沢藤光郎(近鉄)と
欠端光則(大洋ほか)が続く。沢藤は2リーグ分立で近鉄の結成に参加して球団初勝利を挙げ、欠端は
ロッテでリリーバー、大洋ではスターターとして、ともに低迷するチームを支えた。
リリーバーでは現役の
風張蓮(ヤクルト)もいるが、絶対的クローザーは不在。童話のようなチームが投打ともに総力戦で勝ち星を目指していく。
写真=BBM