いよいよ第100回の大きな節目を迎える夏の甲子園。その歴史にこそ届かないが、80年を超えるプロ野球を彩ってきた選手たちによる出身地別のドリームチームを編成してみた。優勝旗が翻るのは、どの都道府県か……? エースと四番は巨人のレジェンド
面積の広さでは47都道府県ではダントツ。本州に次ぐ2番目の広さを誇る島が丸ごと北海道なのだから当然だが、つい他の都府県と同じ感覚のまま車やオートバイで道内を移動すると大変なことになる。離島便を除いて同じ都道府県の中を移動する航空便があるのは唯一で、かつては夜行列車が道内の各地を結んでいた。
日本の最北端および一般人が行かれる最東端も北海道だ。県庁所在地の札幌市は2004年から
日本ハムが本拠地にしていて、現役でリリーバーの
鍵谷陽平らが北海道出身だが、まだ歴史が浅いこともあって日本ハム勢はラインアップにいない。というより、地元チームの力を借りる必要がないほどの豊富な戦力。プロ野球との関わりも古く、「北海道こそ日本野球のルーツ」という説もあり、ここでもエースと四番打者は巨人の結成に参加したプロ野球のレジェンドだ。
【北海道ドリームチーム】
一(遊)
高橋慶彦(
広島ほか)
二(中)
高沢秀昭(
ロッテほか)
三(左)
若松勉(
ヤクルト)
四(一)
永沢富士雄(巨人)
五(右)
森徹(
中日ほか)
六(三)
鈴木貴久(近鉄)
七(二)
明石健志(
ソフトバンク)★
八(捕)
目時春雄(大洋ほか)
九(投)スタルヒン(巨人ほか)
(★は現役)
近年は微妙な年も増えてきたが、梅雨がないとされ、夏は涼しくて過ごしやすい一方で、冬の寒さは厳しく、最低気温でも旭川市の-41.0度が観測史上ダントツのトップ。そんな旭川市で少年時代を過ごしたのがプロ野球で初めて通算300勝に到達したスタルヒンだ。生まれはロシアだが、生涯、無国籍だったともいう。
剛速球を誇った右腕のスタルヒンと対照的なのは、超スローボールを駆使した左腕の
星野伸之(
オリックス)だ。この両極端ともいえる左右両輪を先発に救援に支えるのが
佐藤義則(オリックス)。リリーバーでは脳腫瘍とも戦った
盛田幸妃(盛田幸希。大洋ほか)、ヤクルト時代の2004年に当時最速タイの158キロを叩き出した
五十嵐亮太(ソフトバンク)や同じく右腕の
青山浩二(
楽天)もいる。
司令塔の目時春雄(富士雄)も球団合併を経ても正捕手の座を守った硬骨漢。戦時中の迫害とも戦ったスタルヒンを筆頭に、波乱万丈を生き抜いたバッテリーは数字以上の力を発揮しそうだ。
一方の四番には、ドリームチームということで敬意も込めて、巨人の初代四番打者となった永沢富士雄を据えた。ただ、四番に座ったのは公式戦の第1試合のみで、用具が粗悪な時代でもあるが、強打よりも勝負強さが持ち味。打線で機能するのは他の好打者たちかもしれない。
主軸は“小さな大打者”

ヤクルト・若松勉
不動のリードオフマンは本職の遊撃で盗塁王3度の高橋慶彦で、続く二番は首位打者にもなった巧打者の高沢秀昭だ。三番にいるのが首位打者2度の“小さな大打者”若松勉。永沢を挟んで五番にいるのが59年に本塁打王、打点王の打撃2冠に輝いた怪力の森徹で、続く六番は“北海の白熊”と呼ばれた鈴木貴久だ。
ここまで高橋を除き全員が外野手で、若手時代に2試合だけ三塁の経験がある鈴木が高橋と三遊間を形成する。七番で二塁に食い込んだのが現役の明石健志。内野手ではチームの先輩でもある
本間満(ソフトバンク)もいて、鈴木を代打の切り札に温存して守備の不安を減らしてもいい。
やや破壊力が物足りないものの、外野には“北海のサラブレッド”
谷木恭平(中日)も控え、打線は機動力も武器。攻守走は実在するチームのような絶妙なバランスだ。不屈の逸話を持つ打者も少なくなく、個性あふれる投手陣とともに最北端から頂点を目指していく。
写真=BBM