1993年オフからスタートしたFA制度。いまや同制度は定着し、権利を得た選手の動向は常に注目されている。週べONLINEでは、そのFAの歴史を年度別に振り返っていく。 ソフトバンクが補強に大成功

FA移籍1年目の2011年、チームに優勝を導く大活躍を見せた内川聖一
2008年オフ以降、FAによる海外移籍が相次いだ反動なのか、10年オフの海外移籍は
ロッテからポスティング制度でツインズへ移籍した
西岡剛のみ。
楽天の
岩隈久志もポスティングでアスレチックから入札されたが、交渉が不成立に終わって残留した。
一方の国内移籍は、セ・リーグでV4を逃した
巨人、パ・リーグでリーグ制覇もロッテに“史上最大の下克上”を許した
ソフトバンクが“本領発揮”。ただ、くっきりと明暗が分かれた。
巨人はFAには手を出さず、トレードに専念。かつてFAで獲得した
豊田清、
小林雅英は自由契約で放出し、トレードでは11年シーズン開幕後、
日本ハムから
高橋信二、ロッテから
サブロー(移籍後は大村三郎)を獲得した。たが、11年オフに高橋は自由契約を志願、大村はFA宣言で早々に巨人を離れ、巨人を自由契約となった豊田は
広島へ、小林は
オリックスへ移籍して、ともに11年限りで現役を引退した。
ソフトバンクはFAでの2選手に加え、オリックスを自由契約となった長距離砲の
カブレラも獲得すると、危なげなくリーグ連覇を果たし、“鬼門”とされたポストシーズンも突破、日本シリーズでも
中日を下して、リーグ優勝、交流戦優勝、クライマックスシリーズ(CS)制覇、日本シリーズ制覇、さらに11球団すべてに勝ち越す“完全優勝”を決めた。
【2010年オフのFA移籍】
2010年11月29日
細川亨(
西武→ソフトバンク)
2010年12月1日
藤井彰人(楽天→
阪神)
2010年12月2日 内川聖一(横浜→ソフトバンク)
2010年12月11日
森本稀哲(日本ハム→横浜)
2011年1月28日
小林宏之(ロッテ→阪神)
西武の司令塔だった細川は新天地でも正捕手として日本一に大きく貢献。特に“鬼門”CSでは古巣の西武を相手に卓越したリードを見せた。同じく捕手のFA移籍となったのが楽天で出場機会を減らしていた藤井で、近鉄時代に慣れ親しんだ関西の阪神で復活。13年には112試合に出場している。
内川がFA1年目でMVPに
低迷する横浜で主砲を担っていた内川は黄金時代のソフトバンクでも主軸となり、歴代2人目の両リーグ首位打者となってMVPに輝くなど、まさに日本一の使者というべき大活躍。自身にとっても初の美酒だった。
チームへの貢献度は打棒にとどまらず、その手首の使い方を
小久保裕紀が参考にするなど、ベテラン、若手を問わず手本となり、故障で出場できないときにはベンチから声を張り上げるなどチームを鼓舞。優勝を目前に涙を流し、優勝が決まると
秋山幸二監督、チームリーダーの小久保に続いて胴上げされた。
盛り上げ役では負けていないのが日本ハムでFAとなった森本だが、内川の抜けた横浜へ移籍したものの故障に苦しみプレーでは真価を発揮できず。ロッテでFAとなり翌11年になってから阪神への移籍が決まった小林もセットアッパーで5敗と苦しんだ。
その人的補償で阪神から移籍したのが内野手の
高濱卓也。高校生ドラフト1巡目で08年に入団も一軍出場ゼロだったが、ロッテで出場機会を得ると、その後も内野のユーティリティーとして息の長い活躍を見せている。
写真=BBM