2012年には盗塁王に輝いた聖澤
楽天から戦力外通告を受けていた
聖澤諒が現役引退を決断した。
「120パーセント以上の力を出し切って悔いなく終わることができます。大した成績ではありませんが、そんな選手を11年間最後の最後まで応援してくれたことに感謝したい」
11月23日のファン感謝祭では同期の
伊志嶺忠とともに引退セレモニーが行われ、ファンへの感謝を語った。
「楽しい思い出もたくさんありますが、苦しい思い出のほうが多かったかもしれません。しかし、そんな苦しいときにファンの皆さんからの声援が僕のことを後押ししてくれ、何とか11年もこの世界で生きていくことができました」
果敢に次塁を狙う姿やフェンス際への打球を華麗にキャッチする姿はファンの目にも焼き付いていることだろう。
2008年に国学院大から大学・社会人ドラフト4巡目で楽天入団。「1年目はプロのスピード、キレというものにまったく対応できず、長くはこの世界でやっていけない、そう思いました」と振り返る。
だが、俊足を生かしてチャンスをつかむと、広い守備範囲と正確な送球を武器に3年目には135試合に出場してレギュラーを獲得。12年には54盗塁で球団初の盗塁王に輝いた。その年のチーム盗塁数が119だけに、半数弱の盗塁数を一人で稼いでいたことになる。
そして13年には球団初のリーグ優勝、日本一にも貢献。14年には連続守備機会無失策の日本プロ野球記録を更新し、17年には1000試合出場を達成した。
「シーズン中は“もっともっとうまくなりたい”と自分を褒めたことはなかったが、終わってみて自分の成績を振り返ってみると、よく頑張ったなと言葉をかけたい」
走り続けた11年間。何度も球場を沸かせた背番号23が、惜しまれながら第二の人生をスタートさせる。
聖澤の功績を振り返る中で、あらためて驚いたのは、今季のチーム盗塁数の少なさだった。リーグ最少の69。チームトップは
田中和基の21だ。楽天のスピードスターの称号を引き継ぐ選手が早く現れることを期待したい。
文=阿部ちはる 写真=BBM