現在、『夏 甲子園2019全国49地区総展望』が発売中だ。同誌の中で令和元年の夏、初陣を飾る指揮官を取り上げているが、週刊ベースボールONLINEでも公開しよう。 まずは生活を説いた元プロ

現役時代はバットでアピールすることが多かったが、指導者としては守りの野球を掲げる
千葉市若葉区にある千葉経大付高の練習グラウンド。
森博幸監督は67人の部員の一挙手一頭足に目を光らせていた。
「2014年に学生野球資格を回復。松本吉啓前監督と知り合いだったこともあり、15年から17年夏までここで臨時打撃コーチをしていました。その後、昨年末に学校の方から要請があり、今年度から監督を務めることになったという経緯です。正直僕が? と驚きましたが、高校野球の監督なんてなかなかできるものではない。快く大役を引き受けさせていただきました」
同校は
巨人・
丸佳浩の母校として知られ、春2回、夏3回の甲子園出場がある。元外野手の森監督は
西武黄金時代に代打の切り札として活躍し、引退後は四国IL香川や古巣・西武のコーチも務めた。最初に部員に説いたのは、学校生活であった。
「練習や寮での態度は決して悪くない。でもそれ以上に、授業を含めた普段の学校生活をちゃんとしよう、と。高校生として当たり前のことをきっちりやって、初めて君たちは周りから応援してもらえるんだと口酸っぱく言っています。そこを疎かにする部員は練習に参加させません」
どんな点が気になったのか。
「個々の実力はあるのですが、チームとして見ると一にも二にも練習不足。春季大会も守りのミスで予選敗退していますし、まずはムダなエラーをなくそうと全員危機意識を持ってやっています。守備の反復練習に割く時間は確実に長くなりました」
ムダな失点を軽減し、まずは「初戦突破」

黄金時代の西武で代打の切り札として活躍した
元プロの肩書きから高いレベルの指導を期待されるが、そこはやんわりと否定する。
「現役時代に受けた教えは、あくまでプロレベルで通用する話。ここは、一発勝負の世界。僕はその中で新米にすぎませんし、地方大会で1つ勝つのだって楽じゃない。だから練習試合では相手の監督さんに教えを請いにうかがいますし、試合中も選手の起用法など学ぶことが山のようにある。毎日、その繰り返しです」
高校時代に受けた亡き恩師の指導スタンスがベースにあるという。
「1年生の時の監督さんが勝った時は『よくやった』と褒め、負けた時は『すべて俺の責任だから下を向くな』と言ってくれる方でした。選手に良い練習をさせ、試合でのびのびとプレーさせてあげること。トーナメントは否応なしに重圧がかかりますが、それを跳ねのけるには練習で自信をつけるしかない。だから練習は厳しくなりますよ」
甲子園出場5回という過去にはとらわれず、まったく新しいチームを作り上げたい。今夏の千葉大会に向けた目標も「一戦必勝」と答えるにとどめた。
「ガンガン打ち勝つチームにしたいという理想はありますが、打撃は所詮、水物。目の前の勝ちを逃さないためには、とにかくムダな点をやらないことに尽きる。本番までに投手を含めた守りを固めていきたいですね」
PROFILE
もり・ひろゆき●1963年5月29日生まれ。福岡県出身。小倉工高から新日鐵君津へ進み、86年ドラフト4位で西武から指名も、同年シーズン終了後に入団。代打、DHを中心に活躍し、91年は自己最多86試合に出場、打率.303、7本塁打。97年の引退後は西武コーチなどを務め、今年4月、千葉経大付高監督就任。NPB通算374試合、打率.275、15本塁打、80打点。
文=黒田創 写真=BBM