
気迫の投球で数々のピンチをしのぎ、いまや阪神のリリーフ陣には欠かせない存在となった守屋
語り継がれる言葉がある。そのひと言で前を向く力をもらえる言葉。それが実績のある選手からであれば、なおさら明日への勇気となるはずだ。今季、阪神の中継ぎ陣の中で3番目に多い57試合に登板した
守屋功輝投手。昨季までの3年間で、一軍登板は9試合。昨季は防御率11.57。それが今季は早いイニングで先発が崩れたときの中継ぎとして存在感を示した。
「(今季)打ち込まれる試合が続いたとき、青柳(晃洋)と話をしていた中で『オレは鳥谷(敬)さんからこう言われたよ』と教えてくれた言葉があって、それを聞いて僕もそうだな、と。そこで前を向けるようになりましたね」
その内容は「気持ちを切り替えて次の試合で抑えればまたチャンスをもらえる。一軍にいるからこそ、それができるんだ。落ち込むのはダメなことだ」というものだった。
守屋投手は5月15日の
巨人戦(東京ドーム)でプロ初勝利を挙げたが、次登板となった17日の
広島戦(甲子園)で1アウトも取れず5失点降板。その後、6月18、19日の
楽天戦(倉敷、甲子園)で打たれ負け投手となり、気持ちはかなり落ち込んでいたという。しかし、青柳投手との会話で「落ち込むのは二軍降格のときでいい。今一軍にいてチャンスがあるんだから」と思えた。
このときに会話の中で聞いた
鳥谷敬選手の言葉。これが守屋投手の心を救い、今季57試合のマウンドに立った原動力の一つとなったのだ。
鳥谷選手から青柳投手。そして守屋投手へ。さらに今後、守屋投手から次の若手へと語られるはずだろう。鳥谷選手は今季限りで退団をしたが、その言葉はチームの伝統の一部として語り継がれていくはずだ。
文=椎屋博幸 写真=BBM