
常にまじめに日本の野球に一生懸命に向き合っているボーア
右臀部の張りで治療に専念した後、7月23日の
広島戦(甲子園)に代打で登場(四球)。翌24日の
中日戦(ナゴヤドーム)で5試合ぶりにスタメン復帰したボーア。豪快な本塁打は出なかったが、多くのファンは復帰に喜んだはずだ。7月に入り日本の野球に慣れたのか、打撃が上向きになった。それ以上に彼の守備や走塁に対しての一生懸命なプレーが、ファンの心をつかみ始めている。その姿を見ながら春季キャンプでボーアが語ってくれた言葉を思い出した。
親日家でもあり、マーリンズでチームメートだった
イチロー氏のことを深く尊敬していることは有名だが、それ以上に
阪神と契約を交わしたとき、外国人選手として、どう対応したらいいのか、アドバイスをもらっていた元助っ人選手がいた。
それが
楽天の2013年の日本一に貢献し、
巨人でもプレーした
マギーだ。「成功するには、自ら心を開いて、日本のプロ野球のやり方や、日本の文化、環境をしっかり受け入れること」という助言だった。昨季で引退した阪神のエース・
メッセンジャーもよく「なかなかそれができるガイジンはいないね」と語っていた。
さらに「『オレはアメリカでこうやってきたから』という考えを持つと成功できない」というマギーの言葉も、記憶に強く残っているとボーアは語っている。現在のボーアを見ているとまさに、そのことを実践しているように見える。開幕から苦しい時期もあったが、そこを乗り越えられたのも、この気持ちがあったからだろう。
コロナ禍の中、ズーム取材を受けたボーアは、報道陣より先に「皆さん元気でしたか?」と画面に問いかける気遣いも見せた。「ここで成功するためにオープンマインドな気持ちをしっかり持って、阪神でのプレーを楽しんでいきたいし、それが成功への近道だと思っている」。ボーアが楽しみながら一生懸命にプレーしてる姿を、われわれは肌で感じているからこそ「今日もボーアのプレーを見たい」と思ってしまうではないだろうか。
文=椎屋博幸 写真=BBM