「もう今年は後輩たちを怒ってばかりですよ」
そう言って笑顔を見せたのは昨年、
横浜DeNAベイスターズからJFE東日本に復帰を果たした須田幸太だ。
早大を卒業後、2009年にJFE東日本へ入社した須田は、この年Hondaの補強選手として都市対抗野球大会に出場し、優勝に貢献。若獅子賞を受賞した。翌年のドラフトで横浜ベイスターズに1位指名され、8年間プレーしたのち古巣・JFE東日本に戻ってきた。「超攻撃的野球」を掲げ、3年ぶりに挑んだ昨年の都市対抗で優勝。橋戸賞を受賞した社会人野球界きっての注目右腕だ。
そんな須田の口から出た「毎日後輩を怒っている」という言葉。普段の温厚な素顔からは想像ができない言葉だけに、その真意を尋ねた。
「今年は、技術面はコーチに任せていますが、メンタル面の指導はボクが行っています。若い子は、自分が中心になって周りが見えないときがあるので、常にみんなから見られているから日ごろの行動からプロ意識を持て、と。一瞬でも気を抜けば、それまでに築いた信頼関係はなくなるから、練習に来たら自分を鼓舞させて、ダラけた姿は絶対に見せるなと毎日怒っています」

追われるチームのつらさを今、味わっている
昨年、優勝したことで、チームには大きな変化があった。それは、どんな試合でも相手が優勝チームと戦うという気合で挑んでくるという点だ。
「正直言うと、去年の優勝はプレーしている自分たちも含めて誰も予想してなかった。予選から見てくれている人はJFE強いね、と言ってくれていましたが、都市対抗を2回逃しているので、周りからは警戒されていなかったと思います。それが今年はどのチームも練習試合からエース級の投手を出してくるので、とにかく勝てない。ボクも調子が悪いときは打たれるので、去年のようにはいかないですね。追われる立場はつらいですよ(笑)」
と話すように、チームが目標に掲げるに連覇への道のりは決して平坦ではない。なかなか勝てないことで選手たちの気持ちも落ちていたが、超攻撃的野球の根本である「元気」を取り戻そうと話し合い、チームを立て直した。

2年連続橋戸賞受賞が目標だ
須田のSNSには「先発完投型にシフトチェンジ中」と書かれたプロフィルがある。これは須田本人の希望でもあるが、連覇を達成するには少し弱い投手陣へのプレッシャーも込められているという。
「監督からは、先発陣がダメだったら考えとけよ、とは言われているけど、俺が先発やってもいいの? と、後輩たちにプレッシャーをかける意味合いが強いです。これが要因かは分からないけど、投手陣は徐々に仕上がってきた。今年は3人の新人投手がチーム内で、どう機能するかがポイントになりそうです。先輩たちを脅かす存在になれば、チームの底上げにもなりますしね。個人の目標としては2年連続橋戸賞受賞。そのためにも連覇します」
各地区予選もスタートし、いよいよ都市対抗に向けて本格始動が始まった。今年はどんなドラマが生まれるのか。都市対抗野球大会本戦は、11月22日に幕を開ける。
須田幸太(すだ・こうた)
1986年7月31日生まれ。茨城県出身。176cm76kg。右投右打。早大を卒業後、2009年にJFE東日本に入社。2010年のドラフト会議で横浜ベイスターズから1巡指名されプロ入り。2019年に古巣であるJFE東日本に復帰し、3年ぶりに出場した都市対抗野球大会で優勝。橋戸賞を獲得した。
豊島わかな(とよしま・わかな)
1986年12月14日生まれ。愛知県出身。2017年から日本野球連盟公式サポーターを務め、社会人野球の魅力を伝えている。
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文=豊島わかな 写真提供=JFE東日本