グラウンド内外でチームを一つに

弱い時期からリーグ3連覇まで正捕手として、またチームから頼られるいぶし銀の存在であった
さすがに引退会見で「すごく幸せな時間でした」と、現役を振り返った選手だ。オーナー、球団に始まり、そのスタッフ、医療従事者から監督・コーチ、先輩、後輩、戦った仲間、裏方さん、両親、家族、そして日本一のファンへ。その引退スピーチは、最初から最後まで周囲への感謝の言葉で埋め尽くされていた。
カープひと筋に現役生活19年。捕手では球団史上最多の1620試合に出場し、球団捕手最多の1022安打も放った。6年連続サヨナラ打点や、ボールの行方を見失い、とっさに地面の土をつかんで相手の進塁を阻止したプレーなど、印象的なシーンは多いが、その存在価値はプレーだけにとどまらない。2015年に
黒田博樹と
新井貴浩がチームに復帰したときは、2人のベテラン選手と若手の多いほかの
広島ナインを融合させることに心を砕き、2016~18年のリーグ3連覇につなげた。
感謝し、感謝され。引退セレモニーの日は、試合前は
阪神の
藤川球児と
能見篤史、試合後には後輩の
會澤翼に2人の愛娘、そして黒田、新井の両氏も登場し、花束を手渡した。
場内一周の後はナイン一人ひとりと握手。最後に名コンビのジョンソンと抱き合うと、涙雨の降る中、場内は大きな拍手に包まれた。
写真=BBM