2020年12月14日、FA宣言をしていた
DeNAの
井納翔一が
巨人に移籍することが発表された。2年連続で負け越しているものの、先発ローテーションの一角としてプレーしている井納は人的補償措置が不要なCランクの選手。そのため、複数の球団から注目される存在だった。過去には、井納のようにCランクの選手が何人もFA移籍しているが、移籍後に活躍した選手はいるのだろうか? 過去の成功例を調べてみた。
CランクのFA移籍は過去に21人
現在の日本のFA制度では、球団の年俸額の1〜3位をAランク、4位から10位までをBランク、それ以外をCランクとしている。AランクとBランクの選手を獲得する場合に「補償」が発生し、獲得した側のチームは金銭か人的のどちらかの形で補償を行う必要がある。一方、Cランクの選手は補償が発生しない仕組みになっている。
このランク制が始まったのは2008年。今オフの井納を除くと、これまで延べ21人のCランクの選手がFA移籍を果たしている。以下、FA移籍したCランクの選手をまとめてみた。
●2008年
中村紀洋(中日⇒楽天)
野口寿浩(
阪神⇒横浜)
●2009年
藤本敦士(阪神⇒
ヤクルト)
橋本将(
ロッテ⇒横浜)
藤井秀悟(
日本ハム⇒巨人)
●2010年
藤井彰人(楽天⇒阪神)
●2011年
鶴岡一成(巨人⇒DeNA)
許銘傑(
西武⇒
オリックス)
小池正晃(中日⇒DeNA)
●2012年
日高剛(オリックス⇒阪神)
●2013年
小笠原道大(巨人⇒中日)
山崎勝己(
ソフトバンク⇒オリックス)
中田賢一(中日⇒ソフトバンク)
●2014年
小谷野栄一(日本ハム⇒オリックス)
金城龍彦(DeNA⇒巨人)
●2015年
高橋聡文(中日⇒阪神)
脇谷亮太(西武⇒巨人)
木村昇吾(
広島⇒西武)
●2016年
森福允彦(ソフトバンク⇒巨人)
●2017年
鶴岡慎也(ソフトバンク⇒日本ハム)
●2019年
福田秀平(ソフトバンク⇒ロッテ)
では、この21人の中で、移籍後も活躍したといえる「成功例」はいくつあるのだろうか?
FA移籍したCランクの選手の中で「大成功」といえるのは、2010年オフに楽天から阪神へ移籍した藤井彰人、2011年オフに巨人からDeNAに「出戻り移籍」した鶴岡一成、2015年オフに中日から阪神にFA移籍した高橋聡文の3人だ。
2010年オフ、楽天から阪神へFA移籍した藤井
楽天から阪神へ移籍した藤井は、楽天時代の2009年は35試合、2010年は8試合と出場機会を失っていたが、阪神では不調の
城島健司に代わりスタメン起用。その期待に応えるように、巧みなリードとバッティングで貢献した。2013年には自己最多に迫る112試合に出場。2014年以降も他の捕手と併用される形で重宝され、2015年に体力の衰えもあり現役引退した。
鶴岡は、巨人時代は出場機会に恵まれなかったが、古巣復帰1年目はスタメンで自己最多となる102試合に出場。翌2013年はバットでも貢献し、前年を超える108試合とチームの主力として活躍した。残念ながらこの年のオフにFA移籍の人的補償で阪神に移籍。阪神では藤井彰人などと併用される形で起用された。
高橋は、中日では中継ぎの一角として活躍していたものの、左肩痛の影響で徐々に調子を落とし、ドン底の状態で2015年オフに阪神に移籍。しかし、翌2016年は54試合に登板して3勝1敗20ホールドと復活。翌2016年は前年を上回る61試合に登板し、6勝1敗20ホールド。防御率は1.70と全盛期に迫る数字を残した。その後は再び左肩痛から調子を落とし、2019年に現役を引退している。
ソフトバンク移籍1年目の2014年に11勝を挙げた中田
この3人以外では、藤井秀悟、小池正晃、中田賢一も新天地でチームに貢献した「成功例」だ。特に中田賢一は、加入1年目は先発復帰してチーム最多タイの11勝。その後も、2ケタ勝利はなかったが、3年連続で勝ち越しており、チームとしては「お買い得」な選手だったのではないだろうか。
一方、FA加入したものの、ケガや不振で出場機会が得られずに1年で退団という例も少なくない。一般的に、FA移籍をしたCランクの選手は、30歳以上のベテランが多い。例えば、過去に活躍していたものの、ピークを過ぎて成績が下降し、年俸も下がったパターンだ。そのため、もう一花が咲かせられないまま、チームを去るケースが多く見られるのだ。
Cランクの選手が活躍するケースは残念ながら多くはない。しかし、鶴岡や藤井など、期待以上の活躍をする可能性もゼロではない。果たして井納は先発のコマ不足に悩む巨人でどのような活躍を見せてくれるのか、来シーズンを楽しみに待ちたい。
文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM