放ち続けた存在感
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11月6日の引退セレモニーで、花束を贈呈されて感極まった表情を見せた
成績では測れぬ貢献度だった。2013年オフに
ソフトバンクからFA加入し、15年からは5年連続のBクラス。捕手陣も世代交代が進み、
伏見寅威、
若月健矢らが台頭し始める中で、若手をサポート。それは練習中のみならずベンチで助言を送り、時に試合後の風呂でメンタル面や配球の話を交わすこともあった。
ソフトバンクで3度の優勝を経験した男は、2番手捕手や二軍に甘んじても、存在感を放ったのは献身的な姿勢がゆえ。当時36歳だった18年オフに2年契約を打診されたのは、そんな姿勢が評価されたにほかならない。
ただ、結果がすべての世界でもある。11月6日の引退会見では「
オリックスで優勝できなかったのことがプロ野球生活一番の後悔」とファンに頭を下げた。その思いは次代に託す。あふれる涙を抑えつつ、会見同日の本拠地最終戦(京セラドーム)では8回に代打で登場し、9回はマスクをかぶって別れの1イニング出場。先発した19歳のドラ1左腕・
宮城大弥のプロ初勝利がかかった最終回を抑え「ホッとしました」と自身最終戦のウイニングボールは若き左腕に手渡した。来季からはバッテリーコーチに。まだまだチームの力になる。
写真=BBM