
開幕から快音を響かせているDeNAの新人・牧
4月11日終了時点でセ・リーグの打率3位につけているのがDeNAのルーキー・
牧秀悟だ。1年目ながら開幕スタメンを勝ち取った牧は、ここまで15試合に出場し、60打数で23安打をマーク。打率は.383と、序盤ではあるが4割に近い数字を残している。今後も順調ならば「首位打者」のタイトルも期待できるが、過去に1年目で首位打者になった選手はいるのだろうか?
1年目での首位打者は長いプロ野球史の中で何人?

98年、新人ながら首位打者争いを繰り広げた阪神・坪井
結論からいえば、2リーグ制となった1950年以降、プロ1年目で首位打者に輝いた選手は一人もいない。本塁打王や打点王になった選手や、沢村賞やMVPに選出されたルーキーはいるが、首位打者は出ていないのだ。
そもそもプロ1年目で3割以上を記録した選手自体が少なく、2リーグ制以降で3割超えはわずかに8人。以下、1年目で3割をマークしたルーキーだ。
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坪井智哉 .327(阪神/1998年)
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広岡達朗 .314(
巨人/1954年)
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石毛宏典 .311(
西武/1981年)
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長嶋茂雄 .305(巨人/1958年)
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清原和博 .304(西武/1986年)
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渡辺清 .303(阪急/1955年)
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横田真之 .300(
ロッテ/1985年)
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高橋由伸 .300(巨人/1998年)
1950年以降でわずか8人と考えると、大卒や社会人関係なく、プロ1年目で3割を打つのは相当に至難の業だといえる。そんな中、高卒1年目で3割を超える数字を残し、31本もの本塁打を放った清原は、まさに史上最強のルーキーだったのではないだろうか。
首位打者に話を戻すと、過去最もタイトルに近かったのが打率.327を記録した坪井。1年目ながら終盤まで熾烈な首位打者争いを繰り広げたが、最終的にトップの
鈴木尚典(横浜)の.337に1分及ばなかった。石毛も1年目ながら
落合博満と激しい首位打者争いの末に、わずかに及ばずに涙をのんでいる。
球界のスーパースターである長嶋は、1年目から目覚ましい活躍を見せ、最多本塁打、最多打点の2冠を達成(当時表彰はなかったが最多安打も記録)。打率も阪神の
田宮謙次郎と首位打者を争ったが、終盤に打率を落として2位でシーズンを終えている。もし仮に首位打者になっていれば、「1年目で三冠王」というとんでもない記録を残していた。
また、打率といえば初代安打製造機こと
榎本喜八の名前を思い浮かべる人も多いと思うが、榎本の1年目は打率.298で実は3割に届いていない。あと1本ヒットが出れば3割というところだったが、残念ながらその1本が出なかった。
2000年以降では、2001年に
赤星憲広(阪神)がマークした.292が最も高い数字となる。新人では歴代4位の39盗塁をマークして、1年目ながら盗塁王に輝いたことがフォーカスされがちだが、バッティングでもチームに貢献した。
DeNAの牧には「史上初」の期待がかかる
1年目ながらセ・リーグの打率3位につける牧は、中大時代には大学日本代表の四番打者に抜擢されるなど、バッティングに定評があった選手だ。早々に一軍スタートが決まり、練習試合では積極的な打撃で注目を集めた。オープン戦でもその勢いは衰えず。
楽天の
田中将大など一流投手にも臆することなく挑み、オープン戦打率.273をマークした。
オープン戦での活躍が評価されて開幕一軍を勝ち取ると、巨人との開幕戦でいきなり三番で起用される。この試合はノーヒットに終わるが、翌日の試合で公式戦初安打を記録。続く3戦目では4打数3安打と活躍し、存在感を見せつけた。4月に入っても39打数15安打と勢いは衰えず、打率.383と高い数字を残している。
DeNAは2020年の首位打者である
佐野恵太、2017年首位打者の
宮崎敏郎と、高いバットコントロール技術を持ち、なおかつタイトルを獲得した選手が2人もいるのも心強いポイント。この2人とともにプレーすることは、大きな成長にもつながるだろう。また、DeNAの打撃コーチが、かつて惜しいところで1年目首位打者を逃した坪井智哉というのも、因縁めいている。
過去にはプロ野球史に名を残すようなレジェンドも達成できなかった、プロ1年目での首位打者。まだ4月の段階なので時期尚早かもしれないが、牧が史上初の快挙を達成する瞬間を期待したい。
文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM