3年前に創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 最後は東尾修の完投勝利
今回は『1972年11月6日号』。定価は100円。
10月12日、阪急戦(西宮)で5対3の勝利。そのとき西鉄ベンチから「胴上げだ!」と叫んだ男がいた。
普段は口数が少なく、ムッツリ右門とも言われた
東田正義である。
47勝80敗3分で、首位阪急には32.5ゲーム差のダントツ最下位。しかも、この年限りで身売りか解散かと噂されるチーム。やけくその言葉かと思ったが、それは違った。
「東尾を胴上げしていいと思って。だって今シーズン、うちで一番頑張っただけじゃなく、パ・リーグでもトップにいるじゃないか。その東尾が、きょうは有終の美を飾って完投で阪急を破ってくれたんだから胴上げしてもいいんじゃない?」
この日、東尾修は自己最高の18勝目を挙げた。309回3分の2は両リーグ最多の投球回。敗戦25はパの記録を塗り替え、313安打、37本塁打もリーグ最多だった(被本塁打は
ロッテ・
成田文男とタイ)。
ベンチに戻った東尾は、
「今年はよく投げて、よく勝って、よく負けたよ」
と笑顔。ただ、自分が胴上げされると聞いて、
「なんで? 俺が胴上げされるなんて、逃げるよ」
と戸惑っていた。
結局、試合後50人ほどの西鉄ファンがグラウンドに乱入し、東尾を祝福。東田は胴上げのタイミングを失ってしまった。
これが西鉄ライオンズ、最後の試合だった。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM