引き継がれている名将の教え

元巨人の原俊介氏が9月1日から母校・東海大相模高を率いている
同じタテジマでも母校・東海大相模高のユニフォームは一味違った。
「いやあ、本当に伝統のある相模ですから、身が引き締まる思いで練習、試合をさせてもらっています」
今夏まで率いた門馬敬治前監督に代わり、原俊介新監督が9月1日から指揮を執っている。
東海大相模高では強打の「四番・捕手」として3年春のセンバツに出場。1996年ドラフト1位で巨人に入団し、2006年までプレーした。引退後は教員資格を取得し、14年3月に学生野球資格を回復。16年4月から東海大静岡翔洋高を率い、甲子園出場には届かなかったが、今夏の静岡大会では準優勝へと導いている。
就任から5日目には早くも神奈川県大会初戦(5日、2回戦、対元石川高)を戦い、21対0で勝利。11日の3回戦(対湘南学院高)は19対1の6回
コールドで突破した。
目指す野球は、何か。3つの柱がある。
「スイングできるチーム。次の塁を狙う姿勢。守りでは失敗を恐れず、次のプレーにつなぐ」
つまり、守備、走塁、攻撃において積極的なスタイルを貫く。1970年夏の甲子園で全国制覇を遂げ、東海大相模高の基盤を築いた原貢元監督からの伝統として根付いている「アグレッシブ・ベースボール」の徹底だ。26年ぶりの母校復帰。新監督として正式就任前、8月中旬からグラウンドで練習を見学してきたが、選手たちの精度の高さに驚いたという。
「私のときも、そういう意識で取り組んでいましたが、より実戦的にやっている。生徒たちで土台を作れている。ゲームのつもりで常に練習している。ゲームのために練習している。加えて、指導スタッフの能力も高い」
甲子園で春3度、夏1度の優勝へ導いた門馬前監督が積み上げた「相模の伝統」が根底にある。今春は10年ぶりにセンバツ制覇。同校初の春夏連覇を狙った神奈川大会は準々決勝を前にして、新型コロナウイルスの感染者が出たため、出場辞退。無念の夏を経験したが、3年生から2年生以下の後輩へと、名将の教えがしっかりと引き継がれていたのである。
「志高く、全国の頂点を目指そう!!」

巨人では96年から11年間、プレーした
原監督も「相模愛」を語る。
「(門馬前監督には)20年以上、強い相模を作っていただいた。OBの一人として、誇らしく思っていました。相模のユニフォームが甲子園に躍動するたび、エネルギーをもらっていました。アグレッシブな野球を定着させ、私も静岡で実践しようと目指してきました。良い部分は継承しながらも私の色も加えていきたい。捕手出身ですので、キャッチャー視点でゲームを動かす形を注入したい」
高校野球の監督となって6年目。「激戦区・神奈川」で戦う上で、謙虚にこう語る。
「静岡では、静岡の野球に育ててもらいました。神奈川では、神奈川の野球を教えていただき、生徒とともに成長していきたい。こうやったら勝てる、とかはありません。新人なので、一生懸命、頑張ってやるしかない」
監督就任時に、目標として掲げたのは「志高く、全国の頂点を目指そう!!」。元プロが指揮する新生・相模がスタートを切った。
文=岡本朋祐 写真=長尾亜紀