今季は高卒2年目のヤクルト・奥川恭伸、オリックス・宮城大弥、そしてロッテ・佐々木朗希が目覚ましい活躍を見せた。果たして、来季彼らのような“覚醒”が期待される投手は誰か? パ・リーグ6球団で飛躍が期待される投手をピックアップした。 北海道日本ハムファイターズ
甲子園を沸かせたヒーロー・吉田輝星も来季は4年目のシーズンを迎える。契約更改交渉では3年目で初のダウンとなった970万円(推定)でサインした。今季は4月2日のロッテ戦(札幌ドーム)で先発するも2回7失点(自責点2)。その後一軍登板はなかったが、ファームでは持ち味である真っすぐの精度を上げ、19試合(15先発)に登板してチーム最多の6勝(8敗)をマーク。秋季キャンプでは
新庄剛志監督に「めっちゃ速くね? 俺の現役のときは打てない」と絶賛された。調子の波をなくし安定した投球ができれば先発ローテーションの一角も狙える。次世代エースとして、ビッグ
ボスが待望する“タレント候補”に名乗りを上げたいところだ。
オリックス・バファローズ
秘めるポテンシャルは確かなものがある。榊原翼が投じる最速150キロ超の直球は球威十分。スライダー、フォークも交え、2019年には10試合連続でクオリティースタートを記録するなど、飛躍が期待された投手だ。ただ、課題の制球力が向上せず。今季の一軍登板は1試合のみ。そのマウンドでも、5四球を与えて3回途中でKOと、能力を生かし切れず。それだけに「一度、頭をすっきりして」と
福良淳一GMが意図を明かすように、来季は育成契約に。再び一軍マウンドへ。同期入団で親交の深い
山本由伸、
山崎颯一郎は先発ローテとして優勝に貢献。入団時から口にしていた「3人そろって先発ローテで活躍したい」を実現させるためにも来季は勝負の年。制球向上で、再び一軍マウンドを目指す。
千葉ロッテマリーンズ
4年の育成期間を経て一軍マウンドに上がる権利を得たのが森遼大朗だ。支配下として契約を更改し、来季は背番号62を着ける右腕。今季は完封を含むイースタントップの10勝をマークするなど安定感が際立った。成長を呼んだのはベテランの助言だ。きれいな投球フォームから伸びのある直球と鋭いスライダーを投じ、さらに今年3月に
美馬学からフォークの心得を聞いた。「『頑張って投げるな』『一番、頑張らなくていい球種』と言われたんです」と、力みをなくしたことで、絶妙なところから落ちるように。投球の幅が広がり、躍進を呼んだ。ただ、まだ成長途中。進化を示すのは、来季の一軍マウンドだ。
福岡ソフトバンクホークス
藤本博史監督は新たな可能性を模索している。2022年に向けて打ち出したのは、エース・
千賀滉大ら一部の選手を除き、まずは先発で調整させて適正を図っていく方針。その中で秋季キャンプ期間中にアピールを見せたのが、田中正義や
大関友久といった今季中継ぎで経験を積んだ選手たちだ。特に田中は5年目の今季、“ようやく出てきた”遅咲きドライチ。2016年秋のドラフトで5球団競合の末に入団したが、ケガや不調など4年間は本当に苦しい道のりだった。今季は18試合に登板して防御率は2.16ながら、要所でピンチの芽をつむ頼もしい姿を見せ、22年シーズンへの飛躍を感じさせている。「期待しているという言葉をかけてもらったので、その期待に応えたい」。本気で狙うは、開幕先発ローテーションからの2ケタ勝利だ。
東北楽天ゴールデンイーグルス
今季、ドラフト1位ルーキーの
早川隆久が9勝を挙げる活躍を見せた一方で、同2位の高田孝一は苦しんだ。プロ初登板初先発は6月26日のソフトバンク戦(楽天生命パーク)。だが、わずか16球で危険球退場となってしまい、実力を発揮する以前に終わった。一軍登板はわずか3試合。それでも二軍では20試合に登板して6勝10敗、防御率3.21と、主に先発として実績を積んだ。「(先発)ローテーションの谷間に入るのではなく、しっかりローテの争いに割って入れるように」と貪欲さを見せている。
埼玉西武ライオンズ
希少なサブマリンは浮上することができるか。昨季、プロ初勝利を含む2勝をマークした與座海人だったが、4年目の今季は1勝に終わった。だが、勝利は得られなかったが10月の先発登板で手ごたえをつかんだという。1日の日本ハム戦(札幌ドーム)は5回無失点、18日のロッテ戦(メットライフ)は5回1/3を1失点、26日の日本ハム戦(札幌ドーム)は6回無失点だった。来季は開幕先発ローテーション入りを狙っていくが、課題は対左打者か。今季、15試合の登板で右打者には被打率.183だったが、左打者には.276。「左バッターへの投げミスをなくすことは来年への課題にしたいと思います」と本人も口にしている。サブマリンが先発で1年を通して本領発揮できれば、チームにとって大きな戦力となるだろう。
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