直球の質がレベルアップ

専大松戸高・平野大地[2年]は慶應義塾高との関東大会準決勝[10月29日]を延長10回、5対3で勝利すると、ガッツポーズを見せた
最後はこん身の141キロのストレートである。
専大松戸高(千葉1位)と慶應義塾高(神奈川2位)との関東大会準決勝(10月29日)は、3対3のまま延長へ。専大松戸高は10回表二死走者なしからの3連打で2点を勝ち越した。
10回裏。6回途中から救援した151キロ右腕エース・平野大地(2年)は簡単に二死を奪った。慶應義塾高の次打者は七番・
清原勝児(1年)。
清原和博氏(元
オリックスほか)の次男で、注目バッターを相手に平野は「中学時代に(清原が所属した世田谷西シニアとの)練習試合で関わりがあったので、打たれたくない。一発は食らいたくなかった」と真っ向勝負を挑んだ。カウント2ボール2ストライクからの5球目に選んだのは、最も自信がある真っすぐ。「アウトコースを狙ったが、勝手に中に入った」と、内角を詰まらせ、遊ゴロでゲームセットとなった。
5対3。専大松戸高は決勝進出を果たし、2年ぶりのセンバツ出場を当確とさせた。この日の平野の最速は144キロ。球速以上に打者の手元でズシン!! とくる重たい球質だった。
「真っすぐの質が上がっている。また、以前は変化球が入らずに、真っすぐに頼る配球でしたが、この2週間でカーブ、スライダーにも自信が持てるようになりました」
今秋の千葉県大会で優勝後、疲労による右肩の不調を訴えた。約2週間のノースローを経て、関東大会に照準を合わせてきた。明和県央高(群馬)との1回戦では登板なく、作新学院高(栃木)との準々決勝では3回途中からリリーフし、味方の逆転勝利につなげる好救援を見せた。そして、中3日の準決勝もリリーバーとして、存在感を示したのである。
注目されることを力に
取手シニアでは捕手だった。平野の父・勝広さんがかつて竜ケ崎シニアで指導した
原嵩(元
ロッテ)、
今里凌(現専大4年)が専大松戸高で活躍。「自分も持丸修一監督の下で、野球を学ばせていただきたい。持丸監督を甲子園へ連れていきたい」と竜ケ崎一高、藤代高、常総学院高、専大松戸高と4校で甲子園へ導いた名監督が指揮する同校の門をたたいた。
持丸監督は過去に原のほか、ロッテ・
美馬学、
日本ハム・
上沢直之、
ソフトバンク・
高橋礼、ロッテ・
横山陸人、
DeNA・
深沢鳳介らをプロへ送り出し、投手育成に長けている。その影響もあり、平野は高校入学直後に投手転向を志願。持丸監督からの「気持ちで向かっていく姿勢」「ストレートの質」にこだわり、今夏に150キロを計測した。今秋の関東大会で注目度No.1であり、平野は脚光を浴びることも力に変えてきた。
「大阪桐蔭の
前田悠伍投手、仙台育英の
高橋煌稀投手。注目されているピッチャーに負けたくない。もっと注目されて、神宮大会に出場したいと思います」
好きな投手は奥川恭伸
山梨学院高との関東大会決勝で勝利にすれば、全国10地区の優勝校が出場する明治神宮大会へ駒を進めることになる。
2023年ドラフト戦線においては、早くも「上位候補」との声が聞かれる逸材だ。
「進路ですか? 特にまだ考えていません。プロか大学か……。持丸監督と話してからになります」
好きな投手は
ヤクルト・
奥川恭伸。181センチ84キロ。下半身がどっしりしており、上から投げ下ろすフォームはよく似ている。2年秋の県大会の時点で150キロの大台を突破しており、一冬でどこだけ伸ばしてくるのか。
平野の成長から目が離せない。
文=岡本朋祐 写真=高野徹