「秋日本一」をかけた決勝へ自覚十分

7回から救援した作新学院高・小川哲は3回無失点に抑え、初の決勝進出へ導いた[写真=田中慎一郎]
[明治神宮大会高校の部・準決勝]
11月19日(神宮)
作新学院(関東/栃木)8-6関東一(東京)
神宮で学んだことを、神宮で生かす。
作新学院高の147キロ右腕エース・小川哲平(2年)は小針崇宏監督に連れられ、この秋、東京六大学リーグ戦を2試合観戦した。第3週の法大-慶大3回戦と最終週の早慶戦だ。
なかでも印象に残ったのが、延長12回、双方無得点で引き分けに終わった法大-慶大3回戦(9月25日)だという。
「篠木さん(健太郎、法大3年・木更津総合高)と外丸さん(東眞、慶大2年・前橋育英高)の良い試合を見させていただき、エースとしてあるべきピッチングを目の当たりにしました。延長なのに2時間しか経過していなかった。投手が流れを引き込ませるのは、自分にないところ。学べたのは大きかったです」
篠木は10回、外丸は11回を投げた。
マウンド上の立ち居振る舞いだけではない。
「(抑えられるのは)人間性があるからです。(野手が)守ってあげたいという人柄。テンポの良さが攻撃につながる。そのゲームを見てから、考え方が変わりました」
作新学院は5日後、関東大会出場をかけた栃木県大会準決勝(対国学院栃木高)を制し、決勝(対白鴎大足利高)で優勝。地元開催の関東大会を3試合勝ち上がり頂点に立った。
来春のセンバツ出場を当確とさせた明治神宮大会では、北海高との2回戦で先発して9回無失点と好投。作新学院高は延長10回タイブレークを制し、4強進出。関東一高との準決勝では、4点ビハインドを追いついた7回裏から救援すると、チームは8回表に途中出場の菅谷峻汰(1年)のソロで勝ち越し、さらに適時打で1点を加えた。小川哲は2点のリードを守り切り、初の決勝進出を決めた。
「後輩が頑張っているのに、先輩の自分が点を取られるわけにはいかない。持ち味は思い切った投球、強気のピッチングなので、その思いを、相手打者にぶつけていきました」
まさしく、エースの投球だった。星稜高との「秋日本一」をかけた決勝へ向けても、自覚十分のコメントである。
「絶対に勝つ。一人ひとり、相手よりも、勝ちたい気持ちが上回っていた。自分たちの力だけで、ここまで来たのではありません。支えてくれる人、応援してくれる人に感動していただけるようなゲームをしたい。自分たちは一人ひとりの能力が優れているとは言えない。一致団結して相手にぶつかっていく」
最後まで作新の野球を貫く。背番号1の小川哲は神宮で、さらに成長した姿を披露する。
文=岡本朋祐