都市対抗1回戦が転機

西濃運輸・城野は2023年の社会人ベストナイン[捕手]と最多本塁打賞を受賞した[写真=田中慎一郎]
2023年度社会人野球年間表彰が12月12日、東京都内のホテルで行われた。西濃運輸・
城野達哉(中部大)は入社2年目でベストナイン(捕手)と、最多本塁打賞(6本塁打)を初受賞した。
大卒入社2年目はドラフト解禁であり、好捕手・城野は各球団の候補選手にリストアップされていた。しかし、10月26日のドラフト会議で、名前が呼ばれることはなかった。
「シーズンの始まりは『プロに行きたい』という目標を立てて、結果を出したいと思っていたんです。ターニングポイントは、Honda熊本に敗退した都市対抗1回戦でした」
西濃運輸は1点を追う8回裏に2対2に追いついた。しかし、9回表、相手打線の猛攻に遭い、打者11人で8失点。投手をリードする捕手として、勢いを止められず、屈辱の敗退(2対10)を喫したのであった。
黒星を機に、城野は考えを根本から改めた。
「これまでも頭の中にあったことですが、さらに、自分のことよりも、チームの勝利のことを念頭に置くようにしたんです。純粋に目の前の勝利に集中する。日本選手権予選あたりから、良い方向に物事が進んでいきました」
社会人日本選手権は、ドラフト後の開幕。とにかく、チームの勝利のために動いた。西濃運輸は25年ぶりの4強進出。城野は左打席から13打数5安打と、強肩強打で躍動した。邪念を打ち消したことで、成果が出たのである。
5月のJABAベーブルース杯では、2試合で5打席連続本塁打を放った。この量産により、初の個人賞をグッと近づけたわけだが、バットよりもまず、ディフェンスを重視するのが司令塔・城野のスタイルだという。
「まずは、守りのほうで貢献したい。投手陣を引っ張っていくのが、自分の役割です。失点をしなければ、負けることはない。来年こそ、都市対抗で結果を残したいと思います」
プロ入りの夢をあきらめたわけではない。
「評価されるのはスカウトの方なので、自分はチームの勝利を最優先にしてプレーするだけ。結果的に行ければ、良いと思います」
無欲の姿勢が、好結果をもたらした。大卒3年目の2024年シーズン、城野は全力プレーで本塁を死守していく。
文=岡本朋祐