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侍ジャパンで大舞台と無縁も…球界のエースになれる「巨人の右腕」は

 

チームの危機を救った完封勝利


5月7日の中日戦で完封勝利を挙げた山崎伊


 その存在感は戸郷翔征と並ぶ「ダブルエース」と言ってよいだろう。巨人のプロ4年目右腕・山崎伊織だ。

 ただ勝つだけでなく、救援陣を休ませてチームを勢いづけるのが大黒柱の役割だ。負けたら3連敗で借金生活の危機を迎えた5月7日の中日戦(バンテリン)。涌井秀章との投手戦を制した。中日打線を4安打に封じ、今季チーム初の完封勝利。試合の序盤からテンポよくアウトを重ねたわけではない。初回に大島洋平に四球を与えるなど、4イニングで先頭打者の出塁を許した。

 だが、決定打を許さない。6回に一死一、二塁のピンチを迎えたが、細川成也をフォークで空振り三振、中田翔をカットボールで遊飛に仕留めた。9回にはこの試合最速の149キロを計測。最後の打者となった岡本勇希を遊ゴロに仕留めると安どの表情を浮かべた。無傷の3勝目で防御率1.55。6試合全登板で3失点以下に抑えている。

投球スタイルが重なる金子千尋


オリックス日本ハムで通算130勝をマークした金子


 他球団の首脳陣はこう分析する。

「カットボール、シュート、スライダーと横の変化で勝負するイメージだったが、フォークの精度が昨年格段に良くなりましたね。縦の変化も使えるようになったことで、攻略が一気に難しくなった。あれだけ多彩な変化球を高いクォリティーで投げる投手はなかなかいない。制球力もいいし、オリックスのエースだった金子千尋に投球スタイルが重なります」

 金子は現役時代にパ・リーグを代表する右腕として活躍。2014年に16勝5敗、防御率1.98で2度目の最多勝、最優秀防御率に輝くなどオリックスのエースとして7度の2ケタ勝利をマークした。最速154キロの直球に多彩な変化球を織り交ぜて打者を翻弄する投球術で、「芸術」と称されたことも。オリックス、日本ハムで計18年間プレーし、通算130勝を積み上げた。細身だったが大きな故障がなく、シーズン投球回数200イニング以上を2度クリアするなどタフだった。

 戸郷が「剛」ならば、山崎伊は「柔」の言葉がしっくりくる。華麗にしなやかに。東海大4年時にトミージョン手術を受けたため。プロ1年目は登板なしに終わったが、22年は5勝、昨年は自己最多の23試合登板で10勝5敗、防御率2.72をマーク。自身初の規定投球回数、2ケタ勝利をクリアして順調に成長曲線を描いている。

開幕前に口にしていた自覚


 山崎伊は今年の開幕前に週刊ベースボールのインタビューで、自覚を口にしていた。

「1年間だけ結果が残ることって、たまたまでもあると思うんです。それを何年も続けていくことが大事なんで。それに、みんな投げてる球はすごいですし。赤星(赤星優志)にしても、(ドライチの)西舘(西舘勇陽)とかも。だから、僕自身の先発ピッチャーとしての責任感というよりは、もう1回、チャレンジする。初心に帰った気持ちで投げていかないといけないな、と思っています」

「自分で何イニング投げたいというのは正直あまり考えてないですけど、やっぱり先発ピッチャーがイニングを投げることによって、中(中継ぎ)の人の状態も変わってくる。長いイニングを投げる先発が1週間の中で多ければ多いほど、中の人がみんないい状態でマウンドに上がることができる。例えば去年、戸郷は球数が多くなっていても、自分から『行きます』と言っていました。やっぱりそういう姿はみんなが見ていますし、中継ぎの方との信頼関係が生まれる。それにイニングを投げるということは、1年間しっかり投げられているという証拠ですし、そうすればもちろん結果もついてくると思う。それだけ(イニングを)投げさせてもらうということは大事だと思います」

 侍ジャパンで五輪やWBCの大舞台と縁がないが、このまま進化し続ければ巨人のエース、球界のエースになる可能性を秘めている。今年は戸郷と共に投手タイトルを争う活躍に期待したい。

写真=BBM
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