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西武ルーキー成長記

西武・宮澤太成 何が本当に必要か突き詰めて考える 漠然とした行動は少なくなった【西武ルーキー成長記】

 

 現在、埼玉西武ライオンズではコーチを含めた日本一の育成環境を整え、そこで成長した選手が活躍し、優勝していく伝統を継承しつつ、科学的で多面的な要素も加えながら、より良いライオンズとしての新たな育成環境に取り組んでいる。その試みの中の一つに「人財開発」がある。週刊ベースボールONLINEで今季の新人の姿を追っていく連載「西武ルーキー成長記」。獅考トレーニングを受けてどのような感想を抱いたのか。四国IL/徳島からドラフト5位で入団した宮澤太成投手に聞く。

どうやって効率よく成長するか


目標を達成するために日々を振り返りながら着実に前に進んでいる


 大学時代には野球ノートをつけていました。目標を立てて、それを達成するには何が必要なのか。日々何をするか考えて行動し、それをノートに書いていました。やはり、うまくいかないときに、ノートを見て振り返ったら、以前はこういう意識や生活リズムでいたんだ、と。そのときの考え方などを取り入れたら、いい方向へ進んでいったという経験はありました。一直線に成功へ突き進む人は少ない。誰もがいろいろ回り道をすると思いますが、野球ノートをつけることによって、軌道修正はしやすくなったと感じましたね。

 プロに入って獅考トレーニングを受けましたが、より細かく考えるようになりました。例えばありがちなミスとして、何かを身に付けたいときに、あれも、これもとたくさんやり過ぎてしまう。ただ、プロ野球人生は思っているほど長くはない。1年1年が勝負の中で、時間を有効活用しなければいけません。目標達成のためにやるべきことの中でも、何が本当に必要か。重要度に分けて考えていくのは、すごく大切な考え方だと教わりました。

 例えば155キロを投げるために「A」「B」「C」「D」「E」が必要な要素だと考えたとします。しかし、自分の持っている力が「100」しかない。すると、「A=20」「B=20」「C=20」「D=20」「E=20」という力の配分になってしまいます。それをもっと突き詰めて考えて、「A」「B」はすごく重要、「C」はまあまあ重要、「D」「E」はそこまで重要じゃないと細分化して、「D」「E」は思い切って捨ててしまう。そうすれば「A=40」「B=40」「C=20」という力の配分ができるわけです。体力にも限界がありますからね。時間にも制約がある中で、どうやって効率よく成長していくか、そういった考えを獅考トレーニングで身に付けられたのは大きかったと思います。

 実際に自分のピッチングで考えるとカットボールを試合で投げていましたが、バッターからの見え方がスプリットとかぶる部分があるように感じました。それなら投げる意味があまりない。カットボールを切り捨てて、ストレートやほかの変化球を磨く時間を増やすようにしました。

行動に“移し切る”ことも大事


 リフレクションで、日々言語化する習慣は身に付きました。1日を振り返る機会があると、明日はこういうことをやろうという考えになります。すると、例えばキャッチボールを30球投げる中でも、いろいろと試す回数がすごく増える。漠然とボールを投げるのではなく、より意図を持って練習するようになりました。やっぱり、紙に書くことも需要ですね。フリーな状態で考えるだけであれば、155キロを投げるためには、これと、これと、これが重要だと頭に思い浮かびますが、いざ紙に書くとなると「本当にそれでいいのか」とあらためて考え直す。深く考えるようになるので、漠然とした行動は少なくなってきたと思います。

 ただ、考えるだけでは意味がありません。行動に“移す”ではなく、“移し切る”ことが大事になってきます。中途半端にやっても成果は出ないと思うので、必要だと思ったことは全部やり切る。プロは24時間野球をできる環境です。ただ、やり過ぎも注意です。練習場ですべてをやり切ることが前提ですが、僕は部屋には野球を持ち込まないようにしています。オンとオフをしっかりと分けて、「部屋は休む場所だ」という認識でいます。

 最初に立てた「一軍で25試合から40試合登板して防御率2.25以下」という1年目の目標は今も変わらないです。プロ野球は野球を突き詰める職業でしょう。そのためにはしっかり考えて、高いレベルですべてに取り組むことが大切なのは言うまでもありません。獅考トレーニングは、その大きな手助けになると思っています。

写真=BBM

※『獅考(思考)トレーニングとは?』
 若手選手に対して年に数回行うトレーニング。自己理解から始まり、思考の癖であるバイアスを解きほぐし、自身の成功パターンと失敗パターンを見つめ直す。トレーニングを重ねていくなかで、自分が成功するための戦略が練習と一致しているのかをブラッシュアップ。最終回には自己成長分析をスピーチする場を設ける。
週刊ベースボール編集部

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