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【大学野球】全国舞台でベールを脱ぐ逸材右腕 東海大九州キャンパス・廣池康志郎に「北別府二世」の期待

 

「潜在的な身体能力が高い」


東海大九州キャンパス・林田監督は今春からチームを指揮する。昨年までは投手コーチとして廣池を指導してきた[写真=BBM]


 初の全国舞台で、ついに逸材がベールを脱ぐ。

 東海大九州キャンパス(九州地区・南部)の150キロ右腕・廣池康志郎(4年・都城農高)は6月10日に開幕する第73回全日本大学選手権に出場。大会初日(10日)の第3試合(神宮)で、中部学院大(東海地区)との1回戦が組まれている。

 今年4月に就任した林田倫彦監督は昨年まで、投手コーチとして指導。良さをこう語る。

「手足が長い(185センチ85キロ)んですが、柔らかさ、しなやかさがある。ストレートもスピンが効いてくる。腕の振りのわりには、ボールが早く出てくるので、相手打者はタイミングを合わせるのが難しいと思います。50メートル走は6秒台前半で、ジャンプも1メートル。潜在的な身体能力が高いです」

 実家は畜産農家。野球継続の思いと、将来的な人生設計もあり、東海大九州キャンパスの農学部動物科学科を志望。高校3年時、練習会に参加した際の林田監督の記憶は鮮明だ。高校2年時に遊撃手から投手に転向。大学では投手で勝負したい思いが強かったという。

「ブルペンで投げると135、6キロで素材の良さを感じました。専門的な勉強をしたい思いもあったようで、『ぜひ、ウチに』と声がけをさせていただきました。2年間をかけてトレーニング。良い施設、良い環境で体づくりから始めました。柔軟性の背景には、1日約1時間のストレッチをやっていると聞きました。地道な努力が実を結んだと思います」

エース不在でも全国へ


 農学部は牛舎での牛の世話など実習も多いが、野球と両立。3年時には主戦の立場となり、NPBスカウト注目の存在になった。ノーワインドアップから柔軟性を生かし、左足を高く上げる投球フォームには躍動感がある。変化球はスライダー、カットボール、チェンジアップ、スプリット、カーブを投げ分け、林田監督は「手先が器用です」と目を細める。

 入学から身長は6センチ、体重は10キロ増。進路を控えた勝負の最終学年を迎えたが、アクシデントがあった。九州地区南部の熊本県リーグ前に、新型コロナウイルスに感染。「1週間待機、1週間はコンディション調整。県リーグはぶっつけ本番でした」(林田監督)。熊本地区予選は1試合の登板で、南部ブロック決勝リーグ(熊本、宮崎、鹿児島、沖縄の各地区の予選優勝校が出場)でも、マウンドに上がることはなかった。

 エース不在の中でも、東海大九州キャンパスは南部ブロック決勝リーグを3連勝で7年ぶり12回目の全日本大学選手権出場を決めた。

「チーム力の勝利。投手陣が踏ん張ってくれ、打線もここ一番で勝負強さを見せてくれた。学生たちから聞いてはいませんが『廣池を全国大会で投げさせたい』と、意気に感じていた部分があったかもしれません」(林田監督)

卒業後の進路は「プロ志望」


 シーズン中、何度も複数のNPBスカウトから問い合わせがあったという。オープン戦ならともかく、公式戦であり、登板のタイミングを発信するわけにはいかない。「20人ほど視察していただいたゲームもありましたが、こればかりは……(苦笑)」。つまり、プロ関係者からすれば肩透かしの形となったのだ。卒業後の進路は「プロ志望」。多くの視線が注がれる全国舞台は最大のアピールの場だ。

 上京する前には九産大とのオープン戦で最終調整。5イニングを投げ、状態を上げている。林田監督は「都城農業高校の先輩には、213勝の北別府さん(北別府学、元広島)さんがおり、廣池には『北別府二世』になってくれないかなと期待しています」と親心をのぞかせる。

 2024年のドラフト上位候補右腕の愛知工大・中村優斗は、諫早農高(長崎)出身。同じ九州の農業高校出身の右腕に対しては、相当なライバル意識があるという。150キロ右腕が神宮でどのようなパフォーマンスを見せるのか、大会初日から目が離せない。

文=岡本朋祐
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