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全早稲田戦

小宮山監督は「昨年に続いて貴重な経験に」 全早稲田戦は現役大学生が雪辱

 

引退した佐竹が先発


「全早稲田戦」が8月10日、新潟・南魚沼市の大原運動公園ベーマガSTADIUMで行われた。試合後は早大・小宮山監督[右]が、今夏の都市対抗限りで引退したトヨタ自動車・佐竹[左]に花束を渡した[写真=矢野寿明]


【全早稲田戦】
8月10日 ベーマガSTADIUM
早大9−3稲門倶楽部

 早大の現役学生と、OB現役社会人で編成する「稲門倶楽部」が対決する「全早稲田戦」(主催:早稲田大学野球部、共催:南魚沼市教育委員会、後援:稲門倶楽部、(株)ベースボール・マガジン社)が8月10日、新潟・南魚沼市の大原運動公園ベーマガSTADIUMで開催された。

 社会人チームは茨城トヨペット、JFE東日本、Honda、鷺宮製作所、JR東日本、明治安田、トヨタ自動車、日本生命からコーチ、マネジャー、選手の総勢18人が参加。なお「全早稲田戦」は初開催の昨年に続いて、2度目の試みである。

 早大は8月4日から南魚沼市内でキャンプを張っており、ベストメンバーで臨んだ。稲門倶楽部は今夏の都市対抗限りで現役引退した40歳のベテラン右腕・佐竹功年が、母校後輩の前で現役最後の登板。先発して1イニングで2失点だった。1回表二死走者なしから三番・吉納翼(4年・東邦高)が中前打。二盗後、四番・印出太一(4年・中京大中京高)がチェンジアップをたたき、左越え先制2ランを放った。早大は2回表に寺尾拳聖(2年・佐久長聖高)の2点適時打で加点すると、3回表には前田健伸(3年・大阪桐蔭高)が右翼ポール付近へ2ランを放ち、4回表にも尾瀬雄大(3年・帝京高)の中前適時打などで2点を加え、試合序盤で主導権を握った。

 投げては先発・鹿田泰生(4年・早実)が4回無失点と試合を作ると、5回からは小刻みな継投で、9対3で逃げ切った。昨年は計23安打を放った稲門倶楽部が21対2で勝利しており1年後、現役大学生が社会人相手に雪辱する形となった。

 この日は地元・南魚沼市のファン、学童野球チーム、早大野球部OBなど多くの観衆が詰めかけた。内野スタンドでは早稲田大学応援部の約50人よる大応援が繰り広げられ、応援席を指揮するリーダー、吹奏楽団の迫力ある演奏、華やかなチアリーダーズと、東京六大学リーグ戦の神宮球場さながらの雰囲気の中で行われた。球場外にはキッチンカー数店が出店し、お祭りムード一色となった。

早大と稲門倶楽部のコメント


 下記は早大と稲門倶楽部のコメントである。

早大・小宮山悟監督
「大学生にとっては社会人野球という厳しい環境下でプレーしている先輩の取り組みなどを吸収する場であり、昨年に続いて貴重な経験となりました。(対戦成績は)1勝1敗ですから、来年は決戦ですね。(佐竹投手については、自身が)アメリカから戻ってきた1年、佐竹の大学時代を見るタイミングがあり、投げている様が良かった。ロッテに戻ってからはボビー(バレンタイン監督)に『(ドラフトで)獲得してほしい』と真剣に進言したほどでした。残念ながら上背がないという理由で受け入れてくれませんでしたが、私は当時から実力を高く評価していました。企業秘密でしょうから細かいことは言えませんが、能力が高く、スペシャルワン。社会人で19年もプレーできたのは、努力の賜物。早稲田にとってシンボリックな存在でした。今後も社会人の顔として、さまざまな活動をしていくと思いますが、日本の野球界のために尽くしてもらいたいと思います」

早大・印出太一主将(4年・中京大中京高)
「昨年は大敗しており、今年はリーグ戦優勝、全日本大学選手権準優勝チームとしてみっともない試合ができない、と勝ちにこだわったゲームでした。序盤に流れを作れたのは良かったです。(佐竹投手から先制2ラン)レジェンドですし、打席に立たせていただいただけでも光栄なことでした。現役選手として、全力でぶつかっていくことが誠意だと思って、バットを振りました。その結果として本塁打を打てて良かったです。社会人選手からはファーストストライクから振ること、2ストライクからの粘りを学びました。できそうなことでも、簡単にできることではない。大学生との違いを感じました。全早稲田戦は先輩後輩の横と縦のつながりを深める貴重な場であり、卒業後、どこかでつながることがある。ありがたい取り組みです」

稲門倶楽部・八木茂監督(鷺宮製作所ヘッドコーチ)
「試合の結果としては負けましたけど、社会人チームは最後まで手を抜かず、一生懸命、全力疾走をしてくれた。必死にボールに食らいついてくれた。社会人野球は一本勝負。最後まであきらめない姿勢を、学生たちに伝えられたのかなと思います。(佐竹投手は)無理に投げてもらいました。入社から19年プレーできたのは常日頃からのトレーニング、自己管理を徹底してきたからだ、と思います。大学生は昨年と比較しても、一人ひとりの実力が上がった。選手層も厚くなったと思います。かなりの練習量を積んできたのが、背景としてあると思います」

稲門倶楽部・佐竹功年投手(トヨタ自働車)
「引退した身ですし、早稲田の後輩に対して、失礼と迷惑のないように投げました。(引退してから2週間)練習をまったくしていませんでしたが、これまでの積み重ねで投げられたのかな、と……。ストライクが入ったので良かったです。(印出主将の本塁打は)1球前のストレートの反応を見て、次は(チェンジアップで)落としたんですが、浮いてしまいました。コンタクトする力がある。印出主将に限らず、(全早稲田戦で)1年ぶりの対戦でしたが、1年の成長度合いがすごい、と感じました。リーグ優勝した自信もあるかと思いますが……。(試合後はセレモニーで花束、両チームから胴上げをされ)一選手に、ここまでしていただき、ありがたい気持ちでいっぱいです。改めて、野球を続けてきて良かった。自分は早稲田に育ててもらったと思っています。(今後は)サラリーマンなので、自分で決めることではない。仮に野球のお話をいただいたときには、全うできる準備だけはしておきたい。社会人として新しい立場になり、選手から離れ、さまざまな勉強をしていきたいと思います」

文=岡本朋祐
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