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ヘルナンデス離脱で巨人のキーマンに…他球団から「三番が適任」警戒の強打者は

 

状態が上がっている打撃


8月11日の中日戦で2回、先制打を放った坂本。これが決勝打となった


 勝負の夏場は修羅場をくぐり抜けてきたベテランの力が必要になる。巨人坂本勇人がもがき苦しんだ時期を経て、上昇気流に乗れるか。

 8月11日の中日戦(バンテリン)では2回一死三塁で同学年の大野雄大のツーシームを左前に運ぶ先制の適時打。試合の主導権を握り、決勝打になった。後半戦に入り、復調の兆しが見えている。8月6日に本拠地・東京ドームで迎え撃った首位・広島との3連戦では12打数6安打をマーク。7日の2戦目は2回に中前打、4回に左前打を放ち先制の本塁生還、6回も左翼線に二塁打をはじき返し、通算189度目の猛打賞を記録。歴代2位の川上哲治(巨人)の194度にあと5に迫った。

 7回一死満塁の好機では床田寛樹の内角のカットボールを捉え、打球左翼ポール際へ。惜しくも切れてファウルとなった。打ち直しとなった2球目で低めへのパームボールをうまくすくい上げたが、鋭いライナーは三塁の真正面へ。三塁走者の エリエ・ヘルナンデスが必死で三塁にヘッドスライディングで戻ったが、間一髪のタイミングで併殺に。阿部慎之助監督がリクエストしたが、判定は変わらなかった。翌8日も2試合連続マルチ安打。他球団のスコアラーはこう分析する。

「打撃の状態は上がっていると思います。坂本の真骨頂は下半身の粘りです。タイミングを外されても上体が前に突っ込まずに、踏ん張って下半身主導でさばける。内角をさばく打撃技術は超一級品ですし、強さとしなやかさを持っているから外角もヒットゾーンに飛ばせる。ヘルナンデスが左手首骨折で戦列を離れるので、三番に入る可能性が考えられます。打ち慣れているし適任でしょう。波に乗らせたくないですね」

苦しんでいるシーズン


 ここまで苦しんだシーズンは過去にないだろう。近年は度重なる故障で戦列を離れた時期があったが、試合に出場すればきっちり結果を出していた。今年は三塁にコンバートされて初めてシーズンを迎えることに。長年守り続けていた遊撃に比べて守備の負担が減るため打撃での活躍が期待されたが、なかなか状態が上がって来ない。6月は月間打率.159、1本塁打、4打点。26日に再調整で登録抹消された。08年に遊撃のレギュラーをつかんで、故障以外でファームに合流するのは初だった。
 
 約3週間の調整期間を経て、7月12日のDeNA戦(東京ドーム)に「六番・三塁」で復帰したが、4打数無安打に。開幕前は三塁の定位置が確約されたが状況が変わった。岸田行倫の活躍で出場機会が減少していた大城卓三が一塁で起用され、五番で活躍。一塁を守る岡本和真は三塁に回る布陣が機能していた。坂本はベンチスタートも珍しくない。それでも、チームのためにできることをする。ベンチでは声を張り上げて鼓舞し、代打での出場に備えて集中力を高めて準備していた。

チームの優勝のために


 自分が活躍すれば満足というわけではなく、目指す目標は4年ぶりのV奪回だ。巨人の球団創設90周年のメモリアルイヤーを記念して6月3日に発売された『ジャイアンツ90年史』で、坂本は岡本和と語り合う新旧主将対談で以下のように語っている。

「キャプテンとしての重圧や責任がある。僕もキャプテンになる前は自分の結果で一喜一憂することもあったけど、キャプテンになって時間がたってくると、たとえ自分がまったく打てなくて、ミスをしたとしても、チームが勝てば素直に喜べるようになったからね。僕が若いときからそういうメンタルでやれる環境があった。(高橋由伸)由伸さんや阿部(阿部慎之助)さんといった周りの先輩たちも、自分のことよりチームが勝ったら素直に喜ぶ人がすごく多かったから。負けた試合のあとの雰囲気を含めて、まずチームの勝ち負けが一番にあった。それは今もだけど、自分だけが良ければいいというチームでは絶対にないよね」

「やっぱり長嶋(長嶋茂雄)さん、王(王貞治)さんの時代にV9という今では考えられないような『常勝軍団』になった。その記憶や記録はもちろんファンの方の中には残っていて、今でも強いジャイアンツが見たいと思ってジャイアンツファンでいてくれる人もいっぱい、いると思う。それを選手たちも分かっているから、『勝ちへの執念』が生まれる」

 勝者のメンタリティーを継承する坂本の打棒爆発に期待したい。

写真=BBM
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