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一軍当落線上から巨人に不可欠な存在へ…「宮崎敏郎と重なる」若武者は

 

一軍昇格後、快打を連発


8月24日の中日戦ではプロ初の猛打賞となる4安打をマークした浅野


 一軍当落線上の選手から、2週間も経たず巨人に不可欠な存在になった。高卒2年目の浅野翔吾だ。

 活躍ぶりが際立っている。8月24日の中日戦(東京ドーム)でプロ入り以来初の二番に抜擢されると、好投手・柳裕也から快音を響かせた。初回に内角に張ってくるカットボールを左翼席に運ぶ先制ソロを放つと、5回は先頭打者でスライダーを左中間に運ぶ二塁打でチャンスメーク。吉川尚輝の右前適時打などで2点を追加した。6回は藤嶋健人のスプリットを中前にはじき返す4点目の適時打。

 ここで終わらない。8回も二死一塁で左翼線に適時二塁打。サイクル安打達成はならなかったが、4安打2打点の大暴れで勝利に導いた。お立ち台で好調の要因を聞かれると、しばらく考えた後に「要因はちょっと分からないんですけど、2本目のヒットを打った後にトイレでトイレットペーパーを拾えたので、4打席目は打てたんじゃないかなと思います」と初々しい表情を浮かべた。

 今季は開幕一軍の切符を勝ち取ったが、3試合出場で9打数無安打と結果を残せず登録抹消に。外野の定位置は3枠とも埋まっていなかっただけに悔しさはあっただろう。ファームで鍛錬の日々を積み重ね、思わぬ形で一軍再昇格の声が掛かった。途中加入で攻守に活躍していたエリエ・ヘルナンデスが左手首骨折で戦線離脱。チームにとって大きな痛手だったが、代わりに昇格した浅野がその穴を補って余りある活躍を見せている。

広角に長打を打つ打撃スタイル


8月14日の阪神戦では自身初の満塁弾を放った


 自信をつかむ大きなきっかけとなったのが、ド派手なアーチだった。8月14日の阪神戦(東京ドーム)で、0対0の4回二死満塁で及川雅貴のスライダーを左翼席へ運ぶ満塁アーチ。今季12打席目で初安打が貴重な一発となり、10代の満塁弾はヤクルト村上宗隆が19年7月3日の広島戦(マツダ広島)で放って以来5年ぶり16人目の快挙だった。

 20日からの首位攻防戦となった広島3連戦でも12打数5安打と奮闘した。21日の2戦目には1点差を追いかける7回に床田寛樹のツーシームを左中間にはじき返す同点適時二塁打。逆転勝利の足掛かりを作る活躍を見せると、翌日の3戦目は0対0で迎えた6回一死一、二塁の好機でアドゥワ誠の直球を右前に運ぶ先制適時打。試合は逆転負けを喫したが、存在感が高まっていく。8月に一軍昇格後は32打数14安打で打率.438、2本塁打、9打点。他球団のスコアラーはこう分析する。

「勢いで打っているわけでなく、打撃技術でつかんだ感覚があると思います。懐が深く体の軸がブレず、インパクトの瞬間に押し込むので打球が伸びる。広角に長打を打つ打撃スタイルは宮崎敏郎(DeNA)と重なります。配球の読みもさえていますし、今の浅野は巨人で最も怖い打者ですね」

 高松商で高校通算68本塁打を放ったが、己の生きる道は見えている。身長171cmはプロでは小柄な部類だ。レギュラーをつかむためにはコンタクト能力の優先順位が高くなる。身長172cmと浅野に似た体格の右打者で、首位打者2度獲得した実績を持つ宮崎は参考になる点が多いだろう。

高校時代の恩師の願い


 高校時代の恩師・長尾健司監督は、巨人への入団が決まった浅野と週刊ベースボールの企画で対談した際、「いつも言っているけど、絶対にケガだけはしないように、体のケアには時間をかけてほしい。入学したときから浅野を見ているけど、速いボールに対する慣れとか、外野の守備に対する慣れとかについては、感覚をつかむものを持っている。プロのスピードも、2、3カ月すれば自分の感覚の中に入ってくるんじゃないかな。ただ、ケガをしてしまったら元も子もない」と助言を送っている。

 真剣な面持ちで聞いていた浅野は「1年目は焦らずに、自分で『出たい、出たい』ではなく、しっかり環境に慣れていきたいと思います。体づくりをしっかりして、寮の環境にも早く慣れて、2年目や3年目からしっかりレギュラー争いに入り込んでいけるようにしたいな、と。入寮してしまえば、ドラフトの順位は関係ない。どれだけ必死にできるかが大切だと思います」と誓っていた。

 スターになる選手はチャンスをつかみ、一気に駆け上がる。浅野は今まさに、野球人生を変えるターニングポイントを迎えている。

写真=BBM
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