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他球団から「対戦したくない」 復活した阪神の左腕に「球の質が違う」驚嘆が

 

1009日ぶりの一軍マウンド


8月11日に1009日ぶりの一軍マウンドに上がり勝利を挙げた高橋


 上昇気流になかなか乗り切れない。今季の阪神を象徴する敗戦だった。9月1日の巨人戦(甲子園)。1対1の7回無死一塁で、三塁・佐藤輝明の一塁への悪送球によりピンチを広げて決勝点を許す形に。前夜は佐藤が戸郷翔征から左中間への逆転3ランを放って勝利を飾り勢いに乗りたかったが、手痛い黒星だ。首位・広島ヤクルトに勝利したため、5.5ゲーム差に広がった。

 勝ち続けるしかリーグ連覇の道は切り拓けない。厳しい状況だが、トミー・ジョン手術からリハビリを経て、復活した高橋遥人の存在は明るい材料だ。

 1009日ぶりに一軍のマウンドに上がった8月11日の広島戦(京セラドーム)。緊張は当然あっただろう。表情は硬かったが、左腕から投じる球はうなりを上げていた。初回に小園海斗に右前打を許したが、中村奨成野間峻祥末包昇大から三振を奪う。4回は二死満塁のピンチで代打・石原貴規を内角低めのスライダーで空振り三振に仕留め、左拳を握った。

 89球を投げて5回4安打7奪三振無失点。復帰戦を白星で飾り、「本当にうれしいです。またこうやって勝つことができると思えないときもあったのでうれしいです」、「うまくいかないこともたくさんあったんですけど、周りの方の支えやファンの声がたくさん聞こえたので、それに何としても応えたいと思ってずっとやってきたので、今は夢のようです」と感慨深い表情を浮かべ、スタンドから大きな拍手が注がれた。

持ち球すべての精度が高い


 だが、無理は禁物だ。左肘の状態や体調を考慮し、登板間隔を空ける必要がある。2試合目の登板は中11日で8月23日の広島戦(マツダ広島)。首位を走る相手は再戦で当然研究してくるが、高橋のパフォーマンスは際立っていた。6回まで7三振を奪い、無四球で無失点。2点リードの6回無死一塁では、野間の打球を好フィールディングで投ゴロ併殺に仕留めて主導権を渡さない。7回は失策が絡み無死満塁のピンチで降板したが、救援した石井大智が1失点に切り抜け、2勝目を手にした。

 他球団の首脳陣は、「映像で見たが直球、ツーシーム、スライダーとすべての精度が高い。復帰して間もない投手の球ではない。抜群の安定感で東克樹(DeNA)を連想するが、球の質では高橋のほうが上でしょう。故障さえなければタイトル争いに間違いなく入ってくる。攻略するのが難しい投手であることは間違いない。できれば対戦したくない」と苦笑いを浮かべる。

同学年に多い好サウスポー


 高橋と東は1995年生まれの同学年。この世代は楽天で通算236セーブをマークし、今季からメジャーに挑戦した松井裕樹(パドレス)、現役ドラフトで阪神に移籍した昨季12勝2敗、防御率2.26と大ブレークして38年ぶりの日本一に貢献した大竹耕太郎、ヤクルトのリリーバーとして活躍している田口麗斗と左腕の好投手が多い。

 同学年の選手たちは特別な存在だ。高橋は常葉橘高で2年夏に甲子園出場。快速球左腕としてスカウト陣の評価は高く、プロ志望届を提出したが指名漏れに。「行けないかな? とは思いましたが、(同じ静岡県の聖隷クリストファー高の)翔太(鈴木翔太)が中日に1位指名され、そんなに差があるのかと思って、そこは悔しかったです」と週刊ベースボールの取材で振り返っている。

 悔しさをバネに亜大に進学すると、球速が150キロを超えて大学球界を代表する左腕に。このときもチームメートで同学年の186センチ右腕・嘉陽宗一郎とエースの座を争い、「いつも自分の前には嘉陽がいた。負けたくない」と発奮材料にしていた。

 ペナントレースは終盤に入った。残された試合数を考えると、登板機会は多くない。ただ、高橋が投げると球場が独特の雰囲気に包まれる。長いリハビリを経て、優勝争いの中で先発登板できることは選手冥利に尽きるだろう。逆転優勝でリーグ連覇へ。可能性がある限り戦い続ける。

写真=BBM
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