執念を感じる打席内容
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9月4日のヤクルト戦では途中出場から2安打をマークした
手痛い敗戦だが、過去を振り返っても変えられない。
巨人が9月4日のヤクルト戦(京セラドーム)で0対3と完封負け。相手と同数の9安打を放ちながら相手先発・
吉村貢司郎に決定打が出ず、プロ初完封を許す結果に。前日に続き最下位・ヤクルト相手に手痛い連敗を喫したが、明るい材料もある。
秋広優人が執念を感じる打席内容で結果を残したことだ。
9月3日に2カ月半ぶりに一軍昇格。同日のヤクルト戦で9回に代打で打席に入ると、
小澤怜史の直球にファウルで12球粘って四球で出塁。ココ・モンテスの同点3ランを呼び込んだ。試合は延長戦の末に敗れたが、秋広の出塁が流れを変えて同点劇を呼び込んだ。翌4日の同戦では、7回二死一塁で代打出場し、高く叩きつけた打球は遊撃内野安打に。6月12日の
楽天戦(楽天モバイル)以来の安打を放つと、9回二死一塁でも追い込まれてからファウルで粘り、最後は中前打。一軍昇格してから3打席すべて出塁して存在をアピールしている。
打撃フォームの変化
秋広の打撃フォームを見て、変化に気づいたファンは多いだろう。立てていたバットを寝かせて、テークバックを小さくした。思い切ったフォーム改造は覚悟の表れだ。昨年は121試合に出場して打率.273、10本塁打、41打点。高卒3年目で輝きを放ったが、その後はつまずいた。シーズンオフの球団行事に2度遅刻するなど信頼を失う行動をして、今年の開幕前の実戦でも守備シフトのミスで
阿部慎之助監督から苦言を呈されるなど、レギュラー競争から後れを取った。
開幕をファームで迎え、5月に一軍昇格したが2週間も経たずにファームに逆戻り。6月2日に再昇格したが、打率.229、0本塁打、0打点と結果を出せない。スポーツ紙記者は「どういう打者になりたいのか、本人に迷いが生じているように感じられる。長打を求められているが、
村上宗隆(ヤクルト)、
清宮幸太郎(
日本ハム)のように高々と舞い上がる放物線を打つホームランアーチストでなく、ライナー性の打球で広角に打てるのが秋広の魅力です」と懸念していた。
何かを変えなければシーズンが終わってしまう。本人も危機感があっただろう。打撃フォームの改造に踏み切ったのが8月下旬だった。テークバックを小さくしてミートを重視にした打法で空振りが減り、イースタン・リーグで打率と出塁率が上昇していった。打撃の方向性に光が見えたとき、優勝争い真っただ中の一軍から声が掛かった。
「強力な若手が出てきてくれるといいのですが」
結果を残しても、チームが勝たなければ喜べない。だが、首位の
広島も
DeNAに2連敗し、0.5ゲーム差のまま離されていないことが救いだ。球団OBの
小笠原道大氏は週刊ベースボールのコラムで、今後のセ・リーグの優勝争いについて以下のように言及している。
「リーグ優勝、CSと勝ち進むには、これまでの試合で行ってきたことを変わらず確実に行い、もう一度しっかりと目の前の試合に集中することが大切です。優勝を求めて計算しながら戦うと、いつもとは違った野球、プレーになりがちです。いつもどおりのプレーをいつもどおりに行えるチームに、分があると思います」
「巨人に関しては、先発陣がだいぶ頑張れるようになってきましたが、まだ不安要素も多いですね。キャッチャー、ショートをどう回していくか。また、全体的に若い選手が多いので、経験不足から大事な局面で浮足立つかもしれません。エリエ・
ヘルナンデス選手の穴を含め、
丸佳浩選手、
岡本和真選手、
坂本勇人選手と二塁に定着した
吉川尚輝選手がやっていくしかないですね。
浅野翔吾選手には、このまま行けるところまでなんとか頑張ってもらう。その間にもう1枚、強力な若手が出てきてくれるといいのですが」
ファームで切磋琢磨していた浅野は8月12日に一軍昇格すると、月間打率.348、3本塁打、11打点の活躍で起爆剤になった。浅野に続き、秋広も救世主になれるか。昨年の輝きを取り戻すのではなく、生まれ変わった姿で存在価値を証明したい。
写真=BBM