伯父は元中日・山本昌

帝京大・山本は勝負強さが武器だ[写真=大平明]
【10月19日】首都大学一部リーグ戦
東海大8-2帝京大(東海大1勝)
首都大学リーグ第7週1日目。3位以上に与えられる関東大会への出場権を5チームで争っている。
その一つである帝京大は同じく3位以上を目指す東海大との最終節を迎えた。しかし、この日の初戦は序盤から失点を重ねた帝京大。打線も東海大の先発・
米田天翼(2年・市和歌山高)の前に8回までわずか1安打に抑えられてしまった。
それでも9回表に連打でチャンスを作ると、一死一、三塁の場面で打席に入ったのが山本晃聖(4年・日大藤沢高)だ。「米田投手の球威が落ちてきていたので、変化球を狙いつつ真っすぐには対応する意識で打席に立ちました」とストレートを振り抜いた打球は左中間を深々と破る三塁打。その後のチャンスはもう一押しできず、2対8で敗れてしまった帝京大だったが最後に意地を見せた
山本晃は日大藤沢高の指揮を執る山本秀明監督の長男。高校2年夏は神奈川大会で準優勝したが、最後の夏はコロナ禍のために甲子園大会が中止。神奈川県高野連主催の独自大会は16強に終わった。
父・秀明さんの実兄は
中日でNPB通算219勝を挙げた
山本昌氏。山本晃にとっては伯父にあたるが「ピッチャーとバッターなので顔を合わせても『元気か』と声を掛けてもらうくらいで、野球の話はあまりしないんです。小さい頃に遊んでもらったくらいですね」と思い出を語る。
帝京大には高校の先輩でもある
渡邉諒介コーチに声を掛けてもらったのがきっかけで入学。「練習に参加したときに、チームの雰囲気が良かったので迷いなく決めました」。帝京大では1年春からリーグ戦に出場。2年春には規定打席に到達したが、そのシーズンにチームは二部へ降格。今春は一部に復帰してリーグ優勝と波乱万丈の4年間を過ごしている。「どん底に落ちてしまいましたが、そこから這い上がることでチーム力の高さを見せることができました」。
今年から副将となり、春季リーグではリーグ7位の打率.318をマークしてベストナインを受賞し「下級生の頃から公式戦に起用してもらって感謝しています。その経験のおかげでベストナインが獲れたのだと思います。副主将になってからは全員の目標を一つに合わせるのが大変でしたが、自分の行動で示しつつ、言葉でも思いを伝えてきました」と話しており、唐澤良一監督も「山本は熱い選手で『チームのために』という思いが強い。ベンチでも『あきらめるな』と声掛けをしています」とその人間性を高く評価している。
暑さが収まり上り調子に
この夏は長打力アップを目指してきた。「ヒットを打つ確率を落とさず、長打を増やすために体重を増やしてきました。また、ボールへのアプローチを変えて距離をとるようにし、バットを最短距離で出すのではなく、少しふくらませるように軌道を変えてスイングするようにしたところ、オープン戦では長打が増えました」。
シーズンが開幕してからも第1週の城西大2回戦ではホームランと好スタートを切ったが、翌週の桜美林大1回戦。試合の途中で足がつってしまい「下半身に不安が出て、バッティングの調子も落ちてしまいました」と不調に陥ってしまった。
下半身を鍛え直し、暑さが収まってきたこともあって「やっと疲れも取れてきて、下半身が動くようになってきました」と前週の日体大2回戦は今季初の3安打を記録した。
この日の東海大1回戦では3打席目まではノーヒットに抑えられ、チームも大量リードを奪われたが「チームメートやチアをはじめ、関係者の皆さんがスタンドで応援してくれているので最後まであきらめませんでした」と9回の最後の打席で声援に報いる適時打。
唐澤監督は「山本は自分で考えることができる選手。今日は打ち取られていた打席も良い感じでスイングしていましたし、きっちりと修正してくれました」と対応力の高さを認めている。
10月19日現在、関東大会へ進むには東海大に2連勝したうえで、他チームの結果次第となったが「後輩たちに残してあげられるものは残していきたい。そのためにも関東大会には出場したい」と山本。この一敗で土壇場に追い込まれてしまったが、どん底から這い上がってきた山本ら4年生が最後にもうひと踏ん張りを見せる。
文=大平明