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【高校野球】「あと一つ」の壁を乗り越えた横浜高 秋の関東大会Vにつながった2つの敗戦

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スタジアムは完全ホーム状態


横浜高は健大高崎高の決勝で、延長10回裏一死二、三塁から奥村凌大の適時打でサヨナラ勝ち。17年ぶりの優勝で主将・阿部葉を中心に歓喜の輪ができた[写真=田中慎一郎]


【11月4日】秋季関東大会決勝
横浜高(神奈川)4x-3健大高崎高(群馬)
(延長10回)

 横浜高が17年ぶりに秋の関東大会で優勝した。地元・神奈川開催。県1位校として出場し、決勝では今春のセンバツ王者・健大高崎高を延長10回タイブレークの末、サヨナラで制した。名門・横浜高は県内でもトップの人気を誇り、動員力もナンバーワン。サーティーフォー保土ヶ谷球場は、この日も当日券を求めるファンで、早朝から長蛇の列を作った。観衆4,500人。慣れ親しんだスタジアムは完全ホーム状態で、スタンドでは黄色いメガホンが揺れ、場内が伝統校を後押しした。

 2020年4月から母校を率いる村田浩明監督は優勝インタビューで頭を下げた。

「お力添えをいただき、感謝しています。これからも横浜高校の野球を見せて、応援していただけるような、愛されるようなチームにしていきたいと思います」

 なぜ、横浜高は頂点に立つことできたのか。2つの敗戦が、現チームにつながっている。

 昨夏の神奈川大会決勝(対慶應義塾高)は2点をリードして9回表を迎えたが、逆転3ランを浴び(6対5)、3年連続での夏の甲子園出場を逃した。今夏は東海大相模高との決勝を7回までに2点リードしながら、8回裏に4失点で逆転負け(4対6)。横浜スタジアムで無念の涙を流した。

2年春の県大会後から主将を務めている阿部葉は、不動の一番・中堅のリードオフマンである[写真=田中慎一郎]


 この屈辱の2試合を現メンバーで唯一、出場選手として味わったのは、1年夏からレギュラーの 阿部葉太である。2年春の県大会以降から異例の主将を任され、同秋の新チーム以降もけん引。村田監督から全幅の信頼を受け、同期、後輩からも慕われる不動の一番・中堅が精神的支柱だ。横浜高を支え、厳しい練習を乗り越えてきた。

1年生の150キロ右腕・織田は今夏から多くの経験を積み、関東大会決勝では7回途中3失点の好投。左腕エース・奥村頼人[2年]との2本柱を形成する[写真=田中慎一郎]


「あと一つ足りない」。この課題を埋めるために取り組んできたのが、基本の徹底だ。健大高崎高との決勝で先発した1年生の150キロ右腕・ 織田翔希は言う。7回途中3失点と粘り、村田監督の起用に応えている。

「キャッチボール一つを大事にしてきました。ウオーミングアップにクールダウン。すべてを意識的に取り組んできました」

主将は「全員野球」を強調


 一方、野手については為永皓(2年)が明かす。7回表に同点適時二塁打、タイブレークの10回表は無死一、二塁から犠打を決めた。

「夏はあとアウト6つが取れませんでした。一番はアウトの取り方。守備からリズムを作るのが、横浜高校の野球。キャッチボールを大切に。打撃面もトスバッティングから基礎を反復練習してきました」

 終盤の詰めも大事だが、高校野球は立ち上がりも勝敗を左右する。試合の入りを大事にし、そのためには、練習冒頭から集中力を高めてきた。例えば、シートノックのボール回しの1球目から、神経を研ぎ澄ませる。スキのない野球を目指し、公式戦で実践できたのだ。

 主将・阿部葉は組織力について言及する。健大高崎高との決勝では158キロ右腕・石垣元気(2年)を攻略。「全員野球」を強調する。

「チームの勝利につながる役割を、個々が発揮することができた。石垣投手に対しても、スピードボールに振り負けないように、練習から対策を練ってきました。自分たちはどんな状況、相手にも対応する力があります」

 決勝後、主将・阿部葉は歓喜の涙を流した。

「プレッシャーから解放されたというよりは、うれしさのほうが大きかったです。県大会で優勝した後、村田監督と『関東で優勝します!!』と約束したんです。17年ぶり? 2007年は自分たちが生まれた年ですね。自分たちが、強い横浜高校にしていきたい」

 関東大会優勝校は明治神宮野球大会に出場する。横浜高が名乗りを上げるのは17年ぶり4回目。初戦(2回戦)では四国地区代表・明徳義塾高(高知)と対戦する。

「神宮球場には行ったことがないので、楽しんでプレーしたいです。一戦必勝の思いでやれば、結果はついてくる。しっかり、準備をしたいです」(主将・阿部葉)

 ついに「あと一つ」の壁を乗り越えた横浜高は、新たなステージへと突入する。

文=岡本朋祐

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