恵まれた環境下で日々の活動

社会人野球・サムティ硬式野球部の初代監督として率いる小川監督はチームトライアウト後、参加者の前で話をした[写真=BBM]
サムティ硬式野球部は11月28日、2025年からの本格始動に向けたチームトライアウトを来年からの活動拠点となる「サムティドリームスタジアム」(兵庫県三木市)で実施した。大学生など約80人がエントリー。午前中は30メートル走の計測のほか、基礎メニューで個々の技量をチェックし、午後はシート打撃で実戦力が試された。
不動産事業などを手がけるサムティ株式会社は昨年12月19日、硬式野球部発足の記者会見を開いた。今年1月からは岸田光二GM(報徳学園高-専大)と
小川博文監督(拓大紅陵高-プリンスホテル-
オリックスほか)による、新入部員採用への活動をスタートさせた。第1期メンバーは選手25人を予定しており、この新卒採用のほか、今回のチームトライアウトで若干名を加えてチーム編成していく。
来年1月には、社会人野球を統括する日本野球連盟(JABA)に新規加盟し、2月からチーム練習を開始。3月からはオープン戦を重ね、8月から公式戦への出場を予定する。チームとしての準備期間の都合上、来年の二大大会への挑戦は社会人日本選手権予選からになる。都市対抗予選は26年から参戦する。
恵まれた環境下で、日々の活動が展開できる。2022年7月から経営参画し、サムティのテーマパーク事業の柱であるネスタリゾート神戸内に室内練習場、クラブハウス、選手寮を新設する。冒頭のように、練習拠点は三木総合防災公園野球場を、本拠地スタジアムとして使用する(今年4月に兵庫県より球場ネーミングライツを取得し「サムティドリームスタジアム」と命名)。サムティはかねてからスポーツ振興やアスリート支援を通じて、地域発展の寄与をしてきた。同社の企業理念「全ての人の夢を実現させること」を具現化する上で倫理、情熱、挑戦をキーワードとしている。今回は新たに硬式野球部の活動をしていく中で、拠点の兵庫県三木市の地域に根ざし、愛されるチーム運営を目指していくという。

11月28日のチームトライアウトには約80人が参加。午後のシート打撃では、真剣な表情でボールを追った[写真=BBM]
硬式野球部の活動の第1段階となったのが、11月28日に行われたチームトライアウトだった。早朝から15時頃まで目を光らせていた小川監督は全メニュー終了後、一塁ベンチ前に参加者を集めて、「この出会いを大事にしていきましょう!!」と、感謝を口にした。
「ある程度の人数の入社は決まっていますが、新規チームを立ち上げる中で、今回のトライアウトには『サムティでプレーしたい!!』と熱い思いを持った選手とを融合させたい狙いがあります。参加者の皆さんは目を輝かせ、一つのボールを必死になって追いかけていました。何しろ、ハートが良いんです。その懸命な姿を見て私自身、心から野球をやっていて良かったと思いました。サムティをより良いチームにしていきたいという意欲が増しました。実現できるのならば、皆と野球をしたいですが、選手の枠の関係もあり、そうはいきません。彼らもいずれはユニフォームを脱ぐ日が来ると思いますが、この情熱、そして経験を、さまざまなステージで、次の世代へとつないでいってほしい。野球のみならず、人との出会いは財産です。野球界の先輩として、お願いをさせていただきました」
「一球を疎かにする者は、一球に泣く」
小川監督には社会人企業チームを指揮していく上で、3つのポリシーがある。
まずは、見ている人を熱くさせること。
「さまざまな形で試合観戦する方々を、ワクワクするようなチームにしたいと思います。躍動感があって、お客さんを笑顔にさせる。選手たちは、ちょっとの失敗ではへこたれない強さを持つ。チャンスで打てず、エラーをすれば悔しいでしょうが、下を向かずに、前を見られる、芯の強い選手を育てていきたい」
次に地域活性化、地元への貢献である。
「今回のトライアウトは鈴木英之監督のご配慮をいただいて、近隣の関西国際大学野球部さんの部員さんにお手伝いをいただきました。兵庫県三木市に社会人野球チームが発足するということで、地域の皆さんはファミリーです。ゴルフが盛んな土地柄ですが、野球どころとしてPRしていきたい思いが強いです。都市対抗に出場すれば『三木市代表』になる。本格的に活動を開始する来年2月以降、市民全体で盛り上げていきたいと考えています」

サムティ硬式野球部は来年2月以降、活動拠点の「サムティドリームスタジアム」[兵庫県三木市]で新規メンバー約25人による練習をスタートさせる[写真=BBM]
3つめは、勝利への執念を植えつけること。
「あくまでも相手チームと、勝利を争うわけですから、そこで『何年後に都市対抗出場』とか、甘いことを言っている場合ではありません。われわれが戦いに挑む以上は、まずは、来年の社会人日本選手出場を目指します。選手たちにも『1年目から京セラドームに行く』という話をさせてもらいます。仮に結果が出なかった場合は、そこで学べばいいんです」
小川監督は続ける。
「過去に私がプレーしたプリンスホテルは都市対抗に出場するのは必須であり、後楽園、東京ドームで勝つことが宿命づけられたチームでした。在籍4年で、出場を逃すことはありませんでしたが、予選、本戦のプレッシャーは相当なもの。あの緊張感を味わうのも、久しぶりです……。サムティとして会社内の人たちも期待していると思いますので、スタンドで一体感を共有できる場をつくりたいと思います。現場で戦う私たちは、野球を通じて、周囲を元気づけるのが役割。やるからには、結果を追い求めていきたいと思います」
小川監督には座右の銘がある。
「一球を疎かにする者は、一球に泣く」
拓大紅陵高・小枝守監督(故人)から高校時代、人として生きていく上での基本を学んだ。
「野球というのは、一球で勝負が決まります。実際のゲームだけではなくて、常日頃からの仕事、私生活、そして練習がつながっている」
小川監督は高校卒業後、社会人野球、ソウル五輪(銀メダル)、そして、プロ野球ではオリックス、横浜で長い間、厳しい競争世界を生き抜いていた。引退後、この2球団でコーチ経験も積んできた申し分のない指導キャリアもある。激戦の近畿地区で、新規参入チームが、新たな風を吹かせることが期待される。
文=BBM