パワーあふれるスラッガー

上武大から巨人へドラフト3位で入団した荒巻
来季にリーグ連覇を狙う巨人は、内野手の強化に主眼を置いたドラフトを敢行した。1位で高校生No.1遊撃手・石塚裕惺(花咲徳栄高)を指名。
西武と競合して交渉権を引き当てると、2位も遊撃手で即戦力の呼び声高い浦田俊輔(九産大)を指名した。そして、3位で選んだのが一塁、三塁、二塁を守る左の強打者・荒巻悠(上武大)だった。
祐誠高では1年から四番に座り、高校通算37本塁打をマーク。甲子園出場はならなかったが、福岡県下で名が知られたスラッガーだった。上武大に進学後は1年春から試合に出場し、3年春に打率.455をマーク。4年春は打率.444、3本塁打、15打点で本塁打、打点王の2冠に。4年秋も打率.458、2本塁打、8打点を記録し、最高出塁率(.649)に輝いた。大学リーグ戦通算打率.394、8本塁打、48打点。他球団のスカウトはこう評する。
「スイングスピードが速いのが一番の魅力です。豪快なフルスイングで広角に本塁打を打つが、決して粗いわけではなくタイミングの取り方がうまい。きっちりミートし、選球眼が良いので出塁率も高い。イメージで重なるのは
柳田悠岐ですね」
まだ巨人の来季の内野の構想が固まっていないが、1年目から定位置をつかむチャンスは十分にあるだろう。今季の462得点はリーグ4位。2ケタ本塁打をマークしたのはリーグ2位の27本塁打を放った
岡本和真、14本塁打の
丸佳浩のみだった。次世代を担う強打者の育成は大きなテーマだ。左のスラッガーとして期待された
秋広優人が伸び悩んでおり、荒巻に掛かる期待は大きい。
岡本和真がどのポジションに固定されるかによって、他の選手の起用法も変わってくるが、荒巻は三塁で勝負する可能性が高い。今季は遊撃からコンバートされた
坂本勇人が主に守ったが、109試合出場で打率.238、7本塁打、34打点と不本意な成績に。スポーツ紙記者は「岡本が一塁を守るなら、三塁はレギュラーが白紙の状況になる。荒巻が坂本から定位置を奪うような活躍を見せれば、おのずと新人王の有力候補になるでしょう」と指摘する。
柳田は1年目6試合出場のみ
もちろん、プロで活躍するのは簡単な世界ではない。大卒で入団した柳田も新人の2011年は6試合出場で無安打。ファームでは好成績を残していたが、外野の定位置をつかむのはプロ3年目の13年だった。だが、個々から球界を代表する選手に進化する。15年には打率.363、34本塁打、99打点、32盗塁で首位打者、最高出塁率(.469)のタイトルを獲得。チームの日本一に大きく貢献し、MVPを受賞した。
山田哲人とともに1シーズンで複数のトリプルスリーを達成したのは65年ぶりの快挙だった。
柳田は山田と週刊ベースボールで対談した際、「長く野球をしたいという気持ちしかないけど、目標としては子どもたちにあこがれられるような選手であり続けたいとは思う。ホームランを打ったり、速く走ったり、難しい打球をダイビングキャッチして捕ったり、子どもって単純に自分ができないようなプレーをする選手にあこがれると思うんよ」と語っている。
ソフトバンクの黄金時代を牽引した柳田に、憧れを抱いていたのが福岡県久留米市で生まれ育った荒巻だった。
原は22本塁打、67打点

巨人の大卒1年目野手の新人王は原が最後だ
巨人で新人王を獲得した最後の野手は10年の
長野久義。25歳でプロ入りし、打率.288、19本塁打、52打点、12盗塁をマークした。大卒野手1年目の新人王は、81年の
原辰徳前監督までさかのぼる。東海大からドラフト1位で入団すると、打率.268、22本塁打、67打点をマーク。春先は二塁を守っていたが、
中畑清が故障で離脱したことに伴い、アマチュア時代に守り慣れた三塁へ。中畑が復帰後は一塁に回り、内野陣が固まった。
184センチ、93キロの恵まれた体格には大きなロマンが詰まっている。荒巻も入団1年目から歴史に名を刻む活躍を見せられるか。
写真=BBM